世界遺産/アジアの世界遺産

古都アユタヤ/タイ(3ページ目)

アンコール、スコータイ、ビルマ、セイロン…数々の文化を吸収し、東南アジアの集大成をなしたアユタヤ王朝。破壊し尽くされた廃墟ながら、こうも美しいのはなぜ? 今回はタイの首都バンコクからも近いタイの世界遺産「古都アユタヤ」をご案内!

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

廃墟に眠る多様な建築様式

池に囲まれたワット・プラ・ラーム。トウモロコシのような仏塔がクメール式の特徴。この寺院にはウートーン王が眠っている ©牧哲雄

池に囲まれたワット・プラ・ラーム。トウモロコシのような仏塔がクメール式の特徴。この寺院にはウートーン王が眠っている ©牧哲雄

ビルマに破壊されたワット・プラ・マハタートの仏頭。仏像はその首を切り落とされたが、木に取り込まれてこのような姿になったといわれる

ビルマに破壊されたワット・プラ・マハタートの仏頭。仏像はその首を切り落とされたが、木に取り込まれてこのような姿になったといわれる

最盛期には、3つの宮殿、100の門、400の寺院、1万体の仏像を擁したという古都アユタヤ。スコータイは比較的穏やかで自由だったが、アユタヤはヒンドゥー教の影響を受けたクメールを真似て、王自ら神の化身を名乗り、独裁的で厳粛な法や罰を適用して国を引き締めた。それは建築様式にも現れており、仏像ひとつとっても形は数パターンに決められており、豪華絢爛かつ厳格な美術様式で国民を圧倒した。ちなみに現在バンコクで見られる王宮などはこのアユタヤの豪華絢爛を再現したもので、アユタヤはスコータイとともにタイ美術の基礎を築いた。

目を引くのはアンコールに似たクメール式の仏塔。ウートーン王の墓であるワット・プラ・ラーム、仏陀の遺骨が収めらたといわれる仏舎利塔ワット・プラ・マハタート、アンコールの宝が見つかったワット・ラチャブラナなどがこれにあたる。

 

鋭い円錐が特徴的なワット・プラ・シー・サンペット

鋭い円錐が特徴的なワット・プラ・シー・サンペット

また、スコータイやアユタヤはスリランカ(セイロン)との交易を通して仏教を輸入しており、また同じスリランカ経由で仏教が広まったといわれるビルマの影響も受けて、セイロン式の仏塔も多く見られる。アユタヤ最大の仏塔を誇るワット・プラ・シー・サンペット、王妃スリヨータイのチェディ、ワット・ヤイ・チャイ・モンコンなどがそれだ。

そしてスコータイから伝わるタイ特有の寺院建築が、高さ約20mの大仏を祀るウィハーン・プラ・モンコン・ボピット、レリーフが美しいワット・ナー・プラメン、アユタヤから20kmほど離れた場所にあるバン・パイン宮殿などだ。

このように、多様な文化を融合させながら厳格さを追い求めたアユタヤ文化。その矛盾は、不規則に打ち捨てられた廃墟でありながら、熱帯の重い青空と輝く緑に調和する不思議な古都を彩って、泣けてくるほどの美しさを描き出す。
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