リサーチしてきた音とダンスが出会うタイミングとは?
森永>どこでしょう(笑)。それがわかったらいんでしょうけど、常にトライ&エラーのくり返しです。インドネシアの音楽にはいろいろなタイプの音があって、これをどうやって僕なりに解釈してダンスに落とし込むか、というのは非常に気の遠くなる作業ではありますね。伝統的な音楽についてはみなさん結構知っているし、今はいろいろアクセスもできる。でも僕が現地に行って驚いたのは、インドネシアにもロックがあったり、ラテン音楽があったり、ボサ ノバをインドネシアの楽器でやっていたりするということ。インドネシアの伝統楽器を使った電子音楽なんかもあって、すごく面白いなと思いました。まだまだインドネシアの音楽は紹介されていない部分が多い。僕としては、もっときちんと前に出てもいいのではと感じています。
音的にはなるべくインドネシアの素材で構成しようと考えてはいます。ただガムランひとつにしてもそうですが、ベトナムの方から雲南省につながっていったり、弦楽器にしてもスマトラ島からイラン、トルコと渡ったり、楽器の流れというものが脈々とあって。なるべくそういう部分を踏まえながらつくりたい。あと音楽がこれだけ沢山ある中で、何で僕がつくらなきゃいけないんだろうということから考えるようにしています。まずそういう所からはじめないと、これが僕の音楽です、ダンスのためにつくった音楽ですとは言えませんからね。
(C) TOKIKO FURUTA
『To Belong』プロジェクトの今後の展開、
展望についてお聞かせください。
北村>年末にジャカルタで公演があって、その先も続けようと考えています。基本的にこのチームで展開していきたいし、そこにまた新しい方々が加わる可能性もあります。あともうひとつ、ここから派生した別のプロジェクトを『続・To Belong』という形でやろうかと密かに計画しているところです。それがインドネシアなのか、もしくはその周辺になるのかはまだわからないけれど。今は西ジャワの方にフォーカスを移そうと考えていて。去年、バンドゥンやチアンジュール、ほかスンダ地方でさまざまな武術の達人たちと対面して、とても魅力的な身体同士のコミュニケーションに触れました。相手と楽しんで闘うために、もしくは勝つために、気配を消したり、 ふわっと幽霊的な存在になってしまうときがあるんです。そのゾッとした経験や、見ていて面白いなと思った部分が出発点としてある。またアジアの身体武術はインドネシアに限らず沢山あって、そういう発想ってどこから出てきているのかと考えていくと、いろいろなところにつながっていきそうな気がしています。
スンダで体験した身体技法を核として、インドネシアの西に行き、少しずつ周りを攻めていくことになるのか、インドネシアに留まることになるのか。インドネシアって地域ごとの特性があまりにも違うので、身を投じてからでないとなかなか判断ができない。このプロジェクトが終わってからすぐ身を投じに行くので、きっとそのころ決断がなされると思います。
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