マンションの立地・特性に合った保険を!
保険見直しの進め方
(1) 保険代理店の選択肢を広げる管理会社は、複数の保険会社と代理店契約を結んでいる立場上、各社がバランスよく契約を獲得できるよう、管理組合毎にあらかじめ保険会社の落とし所を決めて行動していると思われる場合があります。
しかし、すでに述べたように、保険の自由化後、各保険会社の引受条件にも格差が生じており、かつてのように「どの保険会社でも似たり寄ったり」という状況ではなくなっています。
管理会社以外の保険代理店にも声をかけ、管理組合がなるべく多くの候補先から最適な選択ができるように環境を整えるべきです。
(2) マンションの特性に合った補償内容を検討する
保険代理店が実際の補償プランの提示の際、そのマンションの立地環境や物件規模等の特性を十分考慮せずに提案している事例も見られます。
例えば、高台に立地しており、地下もないマンションにもかかわらず、水害に備えた補償を付けていたり、まったくその逆で、明らかにリスクが高いにもかかわらず補償のないプランを選択しているようなケースです。
ただ、保険に対する知識も関心もない管理組合にはそこまでのチェックが行き届かず、代理店が提案したとおりの条件でそのまま決まってしまいがちです。
これを防ぐには、マンションのある地域のハザードマップ等を確認して、土砂災害や浸水等の災害リスクがないか事前に確認するなどの対応が少なくとも必要と言えます。
また、保険代理店もそのような事前調査や対応ができているかどうかで、その力量やセンスを見極める判断材料になるでしょう。
(3) 管理組合の事情に合った契約プランを選択する
保険の契約期間には、1年間あるいは5年間の2つの選択肢があります。5年契約の場合、保険料が1割以上の割引きになるので、資金的な余裕があるなら5年を選択する方が合理的です。
また最近では老朽化マンションでの事故発生リスクが上昇したため、築年数が増える毎に保険料を値上げする保険会社が増えています。特に築年数が20年を超えると大幅な値上げとなり、築25年を超えると引き受けない会社もあります。
このような場合、例えば築20年になる直前に5年契約に加入しておけば保険料の増額をその分先送りすることができます。
さらに、「掛捨て型」と「積立型」のどちらを選ぶかという選択肢もあります。
たとえば修繕積立金に十分余裕があり、近い将来大規模修繕などの予定がないなら、積立型を選択する方が掛捨て型に比べて保険料が下がるため、実質的に定期預金よりも有利な運用になることがあります。
もっとも積立型保険の場合、銀行預金と異なりペイオフの制度がないため、万が一保険会社が経営破たんした場合には元本が2割程度毀損するリスクはあるので、その点は留意が必要です。
ただ、日本の損害保険会社は、銀行とは違って、これまで経営破綻した会社はありません。また、各損保会社は万一の場合に備えて再保険していることを考えれば、そのリスクはかなり小さいと言えるでしょう。
マンション管理士は、もちろん保険のプロではありませんが、管理組合のブレーンとして適切な助言を求められる立場から、基本的な保険の知識や業界事情などを定期的にアップデートするようにしておきたいものです。