利用者目線にたった理想の所得連動返還制度とは?
2013年4月に始まった文科省の「学生への経済的支援の在り方に関する検討会」では、有識者によって学生支援の議論が続いています。第11回目の開催となる2014年5月の会議では、所得連動返還制度が検討課題に挙がりました。今回テーマに挙がった所得連動返還とは、卒業後の所得に応じて奨学金の返済額が変動する仕組みで、前述のようにいくつかの国では既に導入されており、収入が低い層の負担を軽減することになります。
ただ、導入にあたっては色々と検討しなければ点があることも事実です。
例えば、「仕事を辞めて専業主婦(夫)となり無収入となった場合の返済はどうなるのか」「奨学金の回収額が少なくなった場合、新規貸与者への財源を確保できるのか」など、少し考えただけでも簡単な問題でないことがわかります。
また、所得連動返還制度を導入している諸外国では、返済開始から25年から30年経つと未返済額を帳消しにするなど、債務の消滅期限を設けています。
一方、日本学生支援機構では“返済の猶予制度”はあっても、死亡や高度障害とならない限り“返済の免除”規定がありません。
これから所得連動返還を本格的に検討していく中で、債務の消滅期限の議論は避けては通れない課題でしょう。
個人的には、一部の学生に対しての給付型奨学金の創設よりも、所得連動返還制度の導入のほうが奨学金の滞納問題の解決につながると考えています。
所得連動返還制度を導入するには、個人の所得を把握する必要があるので2016年に開始予定のマイナンバー制度の活用が前提となります。
そう考えると、今年から来年に掛けて一気に議論が進む可能性があるでしょう。現在、中高生のお子さんを持つ保護者にとっては非常に大切なテーマであるので、今後の文科省の動きには是非注目していただきたいと思います。