負担感が大きい現行の奨学金返済制度

現行の制度では、奨学金の借りた総額により月々の返済額が決められます。つまり、借りた総額が同じであれば、卒業後の収入が高い人も低い人も毎月の返済額が同じということです。

高収入の人にとっては大した問題ではないでしょうが、経済的に厳しい人にとってはその負担は大きなものとなります。

現に日本学生支援機構の調べでは、奨学金の滞納者は33万人を超え、その滞納者の8割以上が年収300万円以下であることが判明しています。

そこで、注目されるのが「所得連動返還」制度です。

所得連動返還とは、卒業後の所得に応じて奨学金の返済額が変動する仕組みで、オーストラリアやイギリスなどいくつかの国で導入されている返済制度です。

実は日本学生支援機構でも2012年度の採用者から所得連動返還制度を始めたのですが、これが中途半端であまり効果的とは言えない内容なのです。


効果的とは言えない現行の所得連動返還制度の問題点

日本学生支援機構が2012年度から導入した「所得連動返還無利子奨学金」の対象になるには、次の2つの条件を満たす必要があります。

(1) 第一種奨学金の採用者であること
(2) 申込み時の保護者の世帯年収が給与所得の場合300万円以下(給与所得以外は200万円以下)

(1)(2)の条件を満たした奨学生が卒業後一定の収入を得るまでは無期限に返済を待つ、という内容であって収入に応じて返済額が変動するわけではありません。

第一の問題点と考えるのが、対象を第一種奨学金の対象者のみとしている点です。日本学生支援機構の奨学金貸与者の約7割は有利子の第二種奨学金を利用しています。

単純に考えて、第一種奨学金のほうが貸与額は少ないことが多く無利子なので、その返済負担は第二種に比べて軽いはずです。

負担感が大きく利用者数も多い第二種奨学金を対象外としていることで、その効果性に疑問を持ってしまいます。

もう一点が、保護者の収入を条件としていることです。

保護者の経済状況と進学率との相関関係はいくつかの調査で明らかになっていますが、保護者の収入条件を設けることが利用者の不安解消につながっているとはあまり思えず、むしろ不公平感を大きくしているのではないかと思ってしまいます。

そんな中、ようやく本格的な所得連動返還に関する議論が始まろうとしています。