世界は「女どうしの愛」に沸いている
先日(みんながプールとか海とかに行ってる頃)、とある友達からお誘いを受けて、『ウィキッド』というミュージカルを観てきました。前からなんとなく評判は聞いていて興味はあったのですが、期待以上に素晴らしかったです。『オズの魔法使い』における「西の悪い魔女」ウィキッド(エルファバ)が本当はどんな人物だったのかを、「南の善い魔女」グリンダとの友情を中心に描いた作品で、『オズの魔法使い』のお話を知っていればいるほど楽しめる仕掛けになっているのですが(アメリカのゲイにとって『オズの魔法使い』はストーンウォール事件を起こさせたほど、思い入れの深い作品です)、知らなくても充分楽しめます。完全な善とか悪は存在しないし、しばしば見た目の印象とは裏腹であるという真実。一方、人はバカだとか不良だとか言われ続けていると本当にそうなっていくという真実。人は自分の幸せのためならポリシーも曲げてしまう(危険な思想にも染まってしまう)という真実。世間で言われていることの多くは根も葉もない噂である(メディアのプロパガンダに洗脳されている)という真実…現代を生きるぼくらにも当てはまる様々なエピソードが、息をもつかせぬ早さで展開していきます。ふつう、1つの作品には1つのテーマだと思いますが、ハッとさせられるような刺激的なテーマが次々に繰り出されるのが本当にスゴイです。何度も観たくなります。
もう一人、いっしょに行った友達(20代)が、緑色の肌で生まれていじめられてきたエルファバがエメラルドシティ(いたるところエメラルドグリーンな街)に行ったときに「誰も自分の肌の色を気にしない。こんなの初めて」と感動していたシーンで泣きそうになったと語っていましたが、『ウィキッド』はものすごくゲイの心の琴線に触れる(ビンビンきちゃう)作品でもあります。調べてみたら案の定、原作を書いたグレゴリー・マグワイアという作家さんはゲイの方でした。
観終わってから、連れてってくれた友達に「アナ雪入ってるよね」と言ったら、「そう言う人は多い」とのこと。エルファバがエルサで、グリンダがアナっていう。『アナと雪の女王』は二人を姉妹にして、『ウィキッド』のような女の友情以上に強い「愛」という絆にしているわけです。『マレフィセント』といい、『思い出のマーニー』といい、『花子とアン』といい、いま、世の中には「女どうしの愛」の物語があふれています。素敵な時代ですね。
というわけで、『ウィキッド』、11月までやってますので、まだの方はぜひ、観に行ってみてください! 『glee』でも歌われた「自由を求めて(Defying Gravitiy)」という歌(歌詞が「Let It Go」にそっくり)を予習していくと、感動が倍増すると思います。