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男性の育休取得率が伸びないのは“パタハラ”のせい?

女性の活躍を引き出すため、政府が掲げる「男性育休取得率13%」。これがなかなか上がりません。しかも、男性が取得しているのは短期の「なんちゃって育休」ばかり。男性の育休取得率が伸びない理由を探ります。

豊田 眞弓

執筆者:豊田 眞弓

教育費 ・ 奨学金ガイド

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男性の育休取得率が上がらない

安倍政権では、成長戦略の1つとして「女性が輝く社会づくり」を掲げています。「輝く」という言葉の中には、人口減時代の労働力不足を補う一方で、少子化解消のために子どもも生んでもらって……ということのようです。
 
パパ育児

パパの育児は子供たちにもうれしいはず


女性が家庭や子どもを持ちながら働き続けるには、家庭での男性の家事・育児への参加は必須です。このため政府は、「2020年度までに男性の育休取得率13%」を目標として掲げています。

厚生労働省の調査では、2017年度に子どもが生まれ育休対象者となる会社員の中で実際に育休を取得した割合は女性が83.2%であったのに対し、男性は5.14%でした。
2010年度1.38%⇒2011年度2.63%⇒2012年度1.89%⇒2015年度2.65%とじわじわ上がる傾向はあるものの、13%はまだまだです。
 

「なんちゃって育休」が主流?

日本生命が2013年度の男性社員の育休取得率100%を達成したと報じられました。会社が100%取得を掲げ、実際に社員が取得したものです。同社の育休制度は最長で2年半休める仕組みになっていますが、男性の育休取得の実態としては、平均5.2日で最長でも16日とのこと。

日本生命の例に限らず、男性の育休は1カ月未満が8割強。多くは1週間程度で有給休暇の範囲で取る例が多く、「男も子育てに参加する」という趣旨と異なるイメージです。「取得」にカウントされるけれど、決して十分ではない「なんちゃって育休」も少なくないようです。育児に専念する時間があることは大事なことだとは思いますが。
 

育児休業給付金の拡大効果は?

少子化解消や男性の育休取得率を上げるため、ここ数年、育児休業給付金の対象や給付割合を拡大してきました。

妻が専業主婦でも利用できるようになって対象者を拡大しただけでなく、給付額も「子どもが1歳になるまで賃金の5割」⇒「夫婦それぞれ半年間は67%」とアップし、さらに2017年10月からは、保育所に入れないなどの事情がある場合には2歳まで育児休業給付金の支給期間が延長されました。

政府が考えているのは、共働きで育児休業給付金を最大にするため、夫婦が交代しながら半年ずつ育休をとる姿です。こうした夫婦が増えれば、「なんちゃって育休」ではなく、男性の育児参加は本物になっていくかもしれません。
 

問題は“パタハラ”?

男性の育休取得が伸び悩む背景に職場環境の問題もあるのでしょうか。2014年5月、連合は「パタニティ・ハラスメントに関する調査」(2013年12月調査実施)の結果を発表しました。

「パタニティ・ハラスメント」は聞き慣れない言葉ですが、「パタニティ(paternity)」は「父性」の意で、わかりやすく言い換えるなら「“育メン”ハラスメント」。男性社員が育休を取ろうとしたり、育児のための短時間勤務やフレックス勤務をしようとしても、上司あるいは会社(社長)が認めず、妨げることをいいます。

「マタハラ(マタニティ・ハラスメント)」は女性社員が妊娠・出産を機にいやがらせや退職勧奨を受けるなどより深刻ではあるものの、「パタハラ」でも育休取得者の評価を下げるなど、長期的なダメージも見られます。

同調査によると、子どもがいる男性社員で過去にパタハラを受けたことがあると回答したのは11.6%。周囲でパタハラに遭った人がいる人も10.8%いました。どのようなパタハラかというと、「子育てのための制度利用を認めてもらえなかった」(5.5%)、「子育てのために制度利用を申請したら上司に“育児は母親の役割”“育休をとればキャリアに傷がつく”などと言われた」(3.8%)など、「子育てのための制度利用をしたら嫌がらせをされた」(1.9%)など。

パタハラが起きる原因として多かったのは(複数回答)、「上司や同僚の理解不足・協力不足」(57.3%)、「会社の支援制度の設計や運用の徹底不足」(45.4%)、「性別役割分担意識」(44.1%)、「職場の恒常的な業務過多」(41.3%)などが挙げられていました。
 

「代わりがいない」ことが最大の理由

同調査では、「育休を取得したかったができなかった・取得したいができないと思う理由」についても聞いています(複数回答)。回答は「仕事の代替要員がいない」(57.9%)、「経済的に負担となる」(32.6%)、「上司に理解がない」(30.2%)などが多くなっています。

経済的負担や上司に理解がないことも、男性が育休を取得しにくい原因として挙がってはいるものの、最大の理由としては、仕事の代替要員がいないことが挙げられています。職場で穴をあけられないため、制度の利用を最初から選択しないのでしょう。

でも、仮に代替要員を補充してもらえたとしても、安易に席を空けようとしない人も多いのではないかと想像します。育休取得で評価を下げられるかもしれないという点は、実は最大の障害になっているのではないでしょうか。
育休取得が人事考課の加点材料となるか、少なくともマイナスの材料にしないことが保証されれば、男性も安心して育休を取るのではないかと思いますが…。

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