ビールの代名詞、ビアラオ
左が90%を超える国内シェアを誇るビアラオの大瓶。中央がビアラオ・ゴールド、右がビアラオ・ダーク
一時の国内シェアはなんと99%! 最近ではややシェアを落としたようですが、それでもゆうに90%は超えています。お店で注文するときも「とりあえずビール」というような言い方はせず、「ビアラオ1本!」といった具合。ビールをラオス語でビアラオというのかと思ったほどです。
夕飯時、ラオスの家庭ではこのビアラオがズラリと食卓を飾ります。グラスに氷を入れてビアラオを注ぐのがラオス流。アルコール度数は5.0~6.5%と少し高め。熱帯地方で温度も湿度も高く、一緒にいただく料理がタイ料理のように濃厚でスパイスも効いているということで、のど越し重視、氷で少し薄くなったくらいのお味がよいのです。
ビールは日本人好みのラガータイプ。スッキリしているけれどコクがあるしっかりとしたお味です。ビールが氷に接するとシュワシュワ泡が立って泡だらけになるのですが、その泡もおいしいのがビアラオの特長です。これで大瓶が100円少々。「ビアラオがあれば他のビールなんて必要ない」というラオス人の気持ちもわかる気がします。
ラオスで飲み会ともなればこのビアラオのケースが山のように積み上がります。ラオスにはどぶろく=ラオサトーや、焼酎=ラオラーオといったお酒もあるにはあるのですが、ラオス人が飲んでいるところを見かけることはあまりありません。いつまでたってもビアラオで、そのためにあえてスッキリと仕上げているのかもしれません。
「もっとコクがほしい」という方はビアラオ・ゴールドをお試しください。ズシンとした重みのあるビールで、こちらのビールの場合、氷を入れるのはもったいないかもしれません。個人的に好きなのがビアラオ・ダーク。ローストした麦芽を使った黒ビールです。
ビアラオがおいしい理由
お店でも、家庭でも、屋外でも、ラオスではアルコールと言ったらとにかくビアラオ!
ラオスは長い間フランスの植民地で、いまでもフランスの影響が随所に見られるわけですが、ビアラオも1973年にフランス資本で創立しました。しかし翌々年の1975年、共産主義国家として独立すると工場は国によって接収されて国営工場となり、ラオス唯一のビール工場として営業を続けます。
ラオスやベトナムでは宗主国がもたらしたフランスパンがおいしいのですが、同じように当初からビアラオの味は高く評価されていました。その後生産システムをビールの本場ドイツから導入し、デンマークのビール会社であるカールスバーグの出資を受けて、洗練されたビールの生産を実現したのです。
そうはいってもフランスやドイツ、デンマークのラガービールとも少し異なる風味を感じます。この味の秘密がお米。ラオスの主食はお米なのですが、もち米(カオ・ニャオ)からうるち米(カオ・チャオ)まで、さまざまなお米が食されています。この米が、ビールの味の決め手となっているようです。
ビアラオは国を代表するビールであるのはもちろん、その味において唯一無二であり、人々が愛するお米も深く関係しているという意味で、ラオス人の誇りとなっているわけなのです。
ラオス社会の縮図として
ラオス人は本当によくビアラオを飲んでいます。日本でさんざんお酒を飲んできた私、当初は「ラオスに来たら自然とお酒も控えられるだろう」なんて考えていました。とんでもない勘違いでした。WHO(世界保健機機関)の調査によると、年間アルコール摂取量についてラオスはASEAN10か国の中で毎年1~2位を争っています。しかも、アルコール摂取のほとんどはビアラオ。特に増えているのが女性の飲酒で、かつては夫がいる席でたしなむように飲んでいる程度だったらしいのですが、社会進出に伴って男性並みに飲むようになっています。
問題もあって、交通ルールも結構適当な状況でこの飲酒量ですから、当然酒酔い運転による事故も社会問題化しています。また、たとえばラオスでは7~10月頃の雨季に僧侶たちは修行期間に入り、一般の人もお酒を控えたりしてきたのですが、そういう風習も廃れつつあるようです。
ビアラオはラオス人の誇りであると同時に、ラオス社会の縮図でもあるのです。