ビール王国ベルギー

ビール王国の首都ブリュッセルで開催される

毎年開催のベルギービールウィークエンド

世界のビール大国の中でも、味や楽しみ方の幅広さでは断トツなのがベルギー。ドイツが「純粋令」なる法律でモルトやホップ以外の原料を厳しく制限しているのに対し、ベルギーでは、フルーツや各種スパイス類などがふんだんに使えます。また、歴史と風土に支えられて独特の発酵・醸造方法が培われたことなどが、バラエティ豊富な理由と言えます。

(c)Belgian Beer Japan

トラピストビール勢ぞろい

そんな中でも、特にベルギーならではのビールを挙げるなら、やはり『トラピストビール』でしょう。世界中、誰にも真似ることができない厳密な定義によって「トラピスト」という名称が保護されていること、そしてその歴史に育まれた奥深い味わいが、あまりにもベルギーらしい独自性を具現しているからです。

近年になって、ベルギー周辺のトラピスト派修道院で新たにビール造りを始めたところもありますが、伝統的な「トラピスト・ビール」といえば、ベルギー国内に6銘柄と、国境を数キロ、オランダ側に進んだところで造られる1銘柄。代表銘柄を1本に絞るのは至難の業ですが、ここでは、ウェストマール(Westmalle)のトリプルを挙げましょう。


代表銘柄ウェストマール・トリプル

かつてベルギーには3000を超える醸造所があったと言われていますが、現在でも人口1000万人に対して100以上の醸造所があります。ビール界ではあまりに有名な評論家の故M.ジャクソン氏が、こうした醸造所の当主たちに「死ぬ直前にもう一本だけ飲みたいビールは」と尋ねたところ一番多かったというのがウェストマール・トリプル。


ウェストマール・トリプルは、アルコール度数9.5%で、美しい透明感のある黄金色。深い味わいですが、同時にほどよい苦味のある後味も魅力で、ビール愛好家をうならせる「ビール飲みのビール」と絶賛されています。蒸し暑いときに汗をかきながら、喉の渇きを潤すためにゴクゴク飲むラガータイプのビールとは程遠い代物です。友と語らいながら、一人で渋く想いをめぐらせながら、ゆっくりと、時間をかけて、味わっていただきたいものです。

ビール飲みのビール

ベルギー醸造家に選ばれたウェストマール・トリプル


トラピスト・ビールとは?

今日、トラピストビールという呼称の使用が許されて醸造所は、ベルギー内とその国境周辺にありますが、主要銘柄はアルファベット順に、アヘル(Achel)、シメイ(Chimay)、オルヴァル(Orval)、ロッシュフォール(Rochefort)、ラ・トラップ(La Trappe)、ウェストマール(Westmalle)、そしてウェストヴレテレン(Westvleteren)。トラピスト会シトー派の14の修道院によって構成される「国際トラピスト協会」が定めた条件を満たす場合のみ「トラピスト」という名称を使用することができるのです。

そもそも、祈りと労働を修道生活の糧とするトラピスト会派では、中世、人々を疫病から守るために、煮沸して保存の効く命の水として醸造したのが始まりです。営利目的とは程遠く、経営は修道院の手にあるので、どんなに需要が増えても修道生活に影響を来たすほどの設備投資はせず、収益は地域社会の慈善事業などに還元されます。こうした背景から、そこそこ需要に見合う大量生産が可能なのは、ウェストマールの他、シメイ、オルヴァルなどに限られています。

醸造所のあるウェストマール・トラピスト修道院(ABDIJ DER TRAPPISTEN VAN WESTMALLE)は、アントワープの北東30キロあまり離れた、広々とした平原の森の中に12世紀以来存在してきました。1836年に修道士用の飲み物として醸造を始めたとされ、商業用販売は1921年以降のこと。トラピスト醸造所の中では、技術的にも設備的にももっとも精力的で大規模なもののひとつです。ダブル(茶褐色でアルコール度数7%)とトリプルの2種類が造られています。

近年新しく改装された

修道院醸造所の近くにはカフェがある

国道12号線沿いの修道院に入る道の反対側にはCafé Trappistenという立派なカフェがあり、他では流通していない修道士用の低アルコールビール「エキストラ」(3.5%)も味わえます。地元のおじちゃんおばちゃんに交じって外国人のベルギービール愛好家も多数訪れ、近年建てかえられて立派になりました。


ベルギー人とビール

いつでもどこでも「とりあえず」ラガービールが当たり前の日本とは違い、ベルギーでは、TPOにあわせて様々なビールを楽しみます。爽やかで明るい季節のテラスでは食前酒にぴったりなフルーツビールや白ビール、凍えるような真冬の暖炉の周りで食後酒に最適なトラピストやストロングエールやスパイスの利いたホットビールといった具合に。ブリュッセル近郊では、16世紀の画家ブリューゲルの頃から親しまれる天然酵母菌の力で発酵させたグーズやクリーク(地元産サワーチェリーを漬けた自然発酵ビール)、西部フランダースでは3年近くも熟成させるレッドエールと、その地方の伝統や風土に根ざした地ビールも健在です。

集めるのも楽しい

ベルギービールは専用グラスで飲む

数百種類というビールには、醸造家のウンチクで決められたさまざまな形の専用グラスがあり、中には木枠のついたフラスコ型グラスや、取っ手が4個もついた陶器製など飛び切り変わったものもあります。地元のビール好きは、自宅の地下室に出身地や味で決めたお気に入りビールをケース単位で買い置き、オリジナルグラスも持って使い分けています。旅人なら、グラスやコースターを集めたり、ビールを飲み比べたりと楽しみはつきません。

ワインが「キリストの血」であるとするカトリック国ベルギーには、アルコールが悪であるという観念は弱く、ビールやワインなどの発酵酒は16歳から公的な場所で飲むことができます。家庭や病院で、テーブルビール(アルコール度数3%程度)が子どもや病気の人も飲んでよい普通の飲料として常備されてきました。


バラエティ豊かなベルギービール、どこで飲む?

400~800種類といわれる

ベルギービールの専門店

ベルギーでも、国内消費の7割は日本やアメリカ同様にラガービールが占めています。街角の店の多くは、バドワイザーを買収して世界一となったベルギー本拠の多国籍ビール会社AB INBEVに系列化されていて、残念ながらビールの選択枝はあまり広くありません。

でも、近年、ベルギービールの人気に伴って、ほとんどの都市には、幅広い品揃えを売り物にした専門のビールショップやパブがあるので、ちょっと調べてから出かけるとよいでしょう。(ガイドの「ブリュッセルのレストラン・カフェ」記事もご参考に)

右側の建物がモナストリウム

ブリュッセル中心街デリリウム・ヴィレッジの入り口

なお、ブリュッセル中心部で、トラピストビールを堪能したいなら、モナステリウム(Monasterium)がおすすめ。レストランがひしめく「聖なる島」の一角デリリウム・ヴィレッジ(Delirium Village)の入り口左角にあります。

<DATA>
Delirium Monasterium(デリリウム・モナステリウム)
住所:Impasse de la Fidélité 1 Getrouwheidsgang, Bruxelles 1000 Brussel
TEL:+32(0)2 512 6836
定休:年中無休
営業時間:11:00-06:00
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