計画都市の未完の教会、コロニア・グエル教会
コロニア・グエル教会。1908年に建設がはじまり、地下礼拝堂のみが完成。1914年に建設は中断され、上部構造が造られることはなかった。写真ではわかりにくいが、光の演出が見事
ガウディは感覚的にデザインを行うため設計図を用いなかったが、自然界の曲線を合理的に再現するため直線で曲線を描く双曲放物面など数学的なアプローチも導入していた
このコロニアのコンセプトもやはり「自然と芸術」。L字の周囲は緑豊かな森林で、内部の建築物は複数の芸術家に設計させて、日頃から自然と芸術に接することのできる健康的な空間を創出した。
その中で、教会の設計を担当したのがガウディだ。地層か採石場のような壁面、不均一な柱、骨のようなアーチを組み合わせた天井、チョウや甲虫の背を思わせるステンドグラス、巨大な貝のオブジェ……大きな建物ではないが、ガウディの世界観が凝縮されている。
機能美にあふれた教会のイス。こちらもガウディのデザイン
この教会で感じたのも「神の胎内」のイメージ。ガウディは敬虔なカトリック信者だったが、「この世界のすべては神の恩寵である」という思いが聞こえてくるようだ。
世界遺産に登録されているのは教会だけだが、エスピナル邸、ソレ・ダ・ラ・トレ邸、工場跡など、コロニア・グエル全体の都市構造が見所でもあるのでお忘れなく。
古代-中世-未来をつなぐ不思議空間、グエル邸
グエル邸の中央サロン。左上がパイプオルガン、左下が黄金の礼拝堂の入口となる黄金の扉。ここで礼拝や音楽会が催された
ドラゴンのオブジェ
たとえば門。直線と曲線が見事に融合した美しいファサードで、鉄を加工することで重厚かつ柔らかい印象を与えている。この門は中央に座すドラゴンから、ドラゴンゲートの通称を持つ。
エントランスは大理石と絨毯、鉄を組み合わせた華麗な空間。2階は一転して木を多用した造りで、ルネサンスやバロック期の重厚な格天井を思わせる。
グエル邸の地下。レンガ造りのミニマルな空間
屋上の煙突(通風口)を利用した不思議なオブジェは未来都市に迷い込んだような造形。一転して地下の厩舎やワインセラーは古代ローマ遺跡を思わせるレンガ造り。全体として、古代-中世-未来をつなぐ不思議な建物という印象だ。