ガウディの名作7点を登録した「アントニオ・ガウディの作品群」
サグラダファミリア。ガウディは設計図を用いずメモと模型で建設を進めていたが、内戦の混乱でほぼ紛失。職人たちの記憶とわずかな図面をもとに工事が進められている
バルセロナにはこうしたガウディの数々の作品が残されているが、そのうち7点が世界遺産に登録されている。今回は「アントニオ・ガウディの作品群」の全構成資産を紹介する。
世界遺産「アントニオ・ガウディの作品群」の構成資産
カサ・パトリョのパティオ(中庭。吹き抜け)。下層ほど青は淡く、窓は大きく造られている。一定の光量を保つための工夫だ。窓やドアの形もユニークで、すべてが手作り
グエル邸屋上のオブジェ。タイルを砕いてモザイクのように描いた粉砕タイルの図柄が美しい
- グエル公園
- グエル邸
- カサ・ミラ
- カサ・ビセンス
- カサ・バトリョ
- サグラダファミリア(生誕のファサードと地下礼拝堂)
- コロニア・グエル教会(地下礼拝堂)
バルセロナに行ったら必ず見てほしいのがサグラダファミリアとカサ・パトリョ。加えてグエル公園を見ればガウディ建築はかなり堪能できるだろう。個人的に好きなのはコロニア・グエル教会。バルセロナ近郊の人気スポット、モンセラットに行く人は、道中にあるのでぜひ! 以下ではガイドのオススメ順に7件すべてを紹介する。
モデルニスモの極地、カサ・バトリョ
カサ・パトリョのファサード(正面)。豪商ジュゼップ・パトリョ・イ・カザノバスから邸宅の改築を依頼され、1906年に完成した。骨のようなデザインが散見されることから、通称は「骨の家」
一説では、カサ・パトリョはカタルーニャ地方の守護聖人サン・ジョルディのドラゴン退治を模しており、屋上にある上の湾曲がドラゴンの背だとか。骨のようなデザインはドラゴンの犠牲者たちのものともいわれる
ところが、このカサ・パトリョには本当に衝撃を受けた。ガウディが目指したのは美の抽出ももちろんだが、それ以上に、いままさに生きている人間の幸福。
たとえば全体の造形。幼少期から身体が弱く持病を持っていたガウディは、飛び回って遊ぶことができなかった代わりに、動植物をよく観察して絵を描き、彼らが自分をよく癒してくれることを知っていた。ガウディが自然界に見られる曲線を積極的に取り入れたのは、自然のやさしさや温かさを再現したかったからなのだろう。
カサ・パトリョ。ガウディは自分の手の石膏模型を使って手すりの使い心地を何度もチェックしたという
たとえば光。ガラスや鏡、パティオの吹き抜けによって自然光を隅々にまで届かせようとする工夫は、病弱ゆえに心を震わす光に敏感だったからなのだろう。パティオを彩る美しい青の装飾は下層に行くほど薄く、窓は大きくなっている。これはどの階にも同様に快適な光を届けるための工夫なのだ。
ガウディにとって、カサ・パトリョのデザインは奇抜でも派手でもなかった。彼が目指したのはただひとつ、使い手の幸福だったのだろう。