ストレス/恋愛・結婚生活・離婚問題のストレス

「夫婦の会話」はなぜすれ違うの?その謎と対策

【心理カウンセラーが解説】とめどない妻の話にうんざりする夫。事務的な夫の反応に冷たさを感じる妻。「夫婦の会話」は、どうしてもこうもすれ違うのか? その謎と対策について考えてみましょう。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

「気持ち」を話す妻 vs 「事実」を伝える夫

険悪は雰囲気の夫婦

話せば話すほど噛み合わない夫婦の会話……その先に待っているものは?


ある日のわが家の会話。テレビのバラエティ番組を観ていた私は、芸人たちのトークに大笑い。そのとき、リビングにやってきた夫に「さっき、芸人の○○さんがこう言ってて、笑っちゃったよ!」と語りかけました。すると「え? 見てなかったからよく分からないんだけど」と答える夫。さらに「だからさ、○○さんが○○して……」と説明すると、「ごめん。俺、バラエティに興味ないんだわ」とボソリ。……私はチッと舌打ちをして、プンプン。

気がつけば、夫と私の会話はいつもこんなパターンです。私は会話が終わるたびに、「ああ、つまんないこと言うんじゃなかった!」と1人でイライラし、夫はそんな私を「なんで怒ってるんだ?」と不思議そうな目で眺めています。すれ違いぎみな生活を改善させようと、せっかく話のネタを振ったのに、会話は一向に盛り上がらない。この夫婦の噛み合わなさは、いったいどうすればいいのでしょう!?
 

「レポートトーク」と「ラポールトーク」の違い

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お互いの話にイラついているだけでは、不快感はなくならない

そんな私の謎に応えてくれたのが、「レポートトーク」と「ラポールトーク」というキーワード。米国の言語学者デボラ・タネンがまとめた、男女によく見られる話し方の違いです。レポートトークとは、事実をレポート(報告)するように、情報を伝えようする話法。一方の、ラポールトークの「ラポール」とは、信頼関係や感情の交流を意味する言葉。つまり、共感や心のつながりを深めようとする話法です。

男性に多く見られるのが、レポートトーク。男性は、職業人生活の中でこの話法を鍛えられます。職場での情報伝達は、感情や主観に流されず根拠を示すことを求められるため、こうした話し方に慣れると、プライベートの中でも知らず知らずのうちにそれが出てしまいます。

一方の女性に多いのが、ラポールトーク。地域や家庭、子どもなど、身近な人と「気持ち」でつながって生活する機会の多い女性は、日頃からこの話法になじんでいます。気持ちを伝え合い共感し合えば、相手との間に信頼を感じ、安心することができるのです。

お気づきの通り、私と夫との会話のすれ違いも、レポートトークとラポールトークの違いによるものだったのです。私が夫に伝えたかったのは、見ていたテレビの内容ではありません。「おかしくて、思わず笑っちゃったんだよね」という感情の投げかけと、「あなたも同じような気持ちになることあるでしょ?」という共感の確認。ところが夫は、「自分はそれを見ていないし、興味がないので、答えようがない」というありのままの事実を返してきました。気持ちを受け止め、共感してもらいたかった私は、的外れな応答をしてきた夫にがっかりしてしまった、ということだったのです。
 

夫婦の幸せは「トーク」の歩み寄りから

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話し方、聞き方を変えるだけで夫婦関係はぐんと良くなる

この「レポートトーク」と「ラポールトーク」の違いを理解しなければ、男女が歩み寄れるはずもありません。どちらが良い悪いということではなく、コミュニケーション文化の違いなのです。

「今日、どこに行ってね。誰に会ってね」と着地点の分からない会話を続ける妻にイラつく夫は、「で、その話の結論は何?」と話の腰を折ってしまうのが常。妻にとっては「結論」などどうでもよく、ただラポールトークを楽しみたいだけなのです。こんなとき、「そうだったのか。よかったなぁ」「会えたの久しぶりだったろう」などと同じ話法で返してあげれば、妻は「そうなのよ。話してよかった」と満足し、気持ちを受け止めてくれた夫に愛を感じるわけです。

一方の夫に対しては、事実や根拠を示し、選択肢や対策を提示して伝えてあげるのが、妻の親切というもの。「今日、ドアが壊れて困っちゃったのよぉ」といきなりラポールトークから始めるのではなく、「ドアが壊れたから、業者に電話したの。週末にカタログが届くから、一緒に選んでくれない?」と、レポートトークで語りかければ、夫も「そうか、うん。そうしよう」と快く会話に応じてくれるはず。思わぬ事故にも粛々と対応し、分かりやすい提案をする妻に、「できる奥さんを持って幸せだなぁ」と感じるものです。
 

2つのトークを身につければ、活躍の場は倍増!

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2つのトークを使える人になれば、活躍の場も広がる

「何を言っても夫は分かってくれない」とぼやく妻、「妻のくだらない話を聞かされてうんざりする」と嘆く夫……。そんな2人は、お互いの会話が「レポートトーク」「ラポールトーク」のすれ違いになっていないか、振り返ってみましょう。外国人同士が交流する際には、相手国の言語を覚えてその国の文化を理解しようと試みるように、夫が妻のラポールトークを、妻が夫のレポートトークを覚えて使っていけば、夫婦の心の距離はぐんと近づいていくでしょう。

この2つの話法を使いこなすことができれば、社会の中でも必ず活躍の場を広げることができます。ラポールトークを使える夫は、部下や女性職員に信頼され、慕われるようになりますし、チームワークのよい職場を作れるようになるでしょう。レポートトークを使い始めた妻は、物事を論理的に考え、問題を合理的に処理する力を鍛えることができますし、その思考力、対応力は、仕事をする際にも必ず役立ちます。

夫婦は、日常会話を通じて異文化を学べる絶好のパートナー! お互いのトークの特徴を学んで円満な夫婦関係を再構築し、自分自身の能力の幅も広げていきましょう。
 
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