その時、任天堂はイカのシューティングを作っていた
イカにも任天堂らしい、ポップなシューティングゲームです(イラスト 橋本モチチ)
任天堂は冗談のような演出で始まった発表会の中で、ひときわ面白いゲームを紹介しました。それが「Splatoon」というタイトル。任天堂ではそれほど多くないTPS、そう、シューティングのタイトルです。
しかし、ただのTPSではありません。何しろ撃つのは弾じゃなくてインクです。インクをそこらじゅうにぶちまけて、塗って塗って、広い場所を塗ったチームが勝つという、そういうシューティングゲームなんです。
しかも、自分の色に塗った場所は、何故かイカになってすいすい泳いで進むことができるんですね。壁に塗れば壁を泳いで登ることができる。逆に敵のインクによって塗られた場所では動きが遅くなります。
Wii U GmePadには全体マップでどこがどの色にどれだけ塗られたのかが分かり、それはすなわち戦況を示す勢力図になります。道を作って一気に仲間を誘導したり、広い場所を塗ることで敵を足止めしたり、戦略もありそうです。ヘッドショットのような精密な射撃ができない人でも、塗りまくることで戦えます。そして、とにかくそこらじゅうを塗りまくる、汚しまくるのが楽しそうなのです。
Splatoonは、見た瞬間に、これは新しいと多くの人が感じるゲームでした。大規模な開発による超精細で大迫力な画面のシューティングゲームで溢れかえっているE3の中にあっても、埋もれることなく、むしろひときわ興味をひき、「まだこんな遊び方が残されていたのか」と思わせます。
冷静に現状を分析した場合、Wii Uがここから挽回するのは非常に難しく、PS4やXbox Oneで発表されたような大作シューティングが売れていくことで各プラットフォームは世界規模の普及を達成していくことでしょう。SCEもマイクロソフトも、独占タイトルがあるかどうかだけでなく、こっちのハードではちょっとだけ早くベータテストに参加してプレイできるだとか、うちのハードだけで使えるダウンロードコンテンツがあるだとか、僅かでも優位な状況を作ろうと頑張っています。
そんな中で、任天堂がとった行動は、より面白い発表会で、いままでにない面白いゲームを発表する、というものでした。シンプルですが、明快な解答です。そしてこの厳しい状況においてなお、シンプルで明快な解答を出せること自体が、任天堂というメーカーの底力を感じさせます。
かつてゲームボーイが発売から時間が経ち、失速しかけていた時、見事復活させたのがポケットモンスターシリーズでした。追い込まれても、次の面白いことを探す、それが任天堂であり、今までも何度となくそうやってピンチを乗り越えてきたメーカーです。その姿勢が今回も良い結果をもたらすかは分かりませんが、任天堂がE3で見せたイカれた演出とイカしたイカのシューティングは、多くのユーザーをワクワクさせたのではないでしょうか。
ガイド追記 2014年6月19日、本文に正確でない表現がありましたので一部修正しました。お詫びして訂正します。
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