10. Woly Wax Color Classicの黒
Woly Wax Color Classicの黒は非常に濃く、はっきりと主張してくる色味。日本では主にアッパーがコードヴァンのもの向けに売られていますが、もともとは傷や色落ちの補修を主目的に開発されたものです。
さて今回は、「色の出し方」が対照的な2つをご紹介しましょう。まずはドイツのWolyのWax Color Classic。日本では主にコードヴァンのお手入れ用として売られている商品ですが、もともとは傷隠しや色褪せた靴用の、どちらかといえば着色を主眼に置いて開発され、ドイツ本国ではそちらの目的向けに販売されています。その色味は、僅かに緑みも感じられるものの、「モゥブレィの黒」に比べ明らかに濃い、いやそれどころかこれまで採り上げた黒の乳化性靴クリームの中では“最も濃く、しかもはっきりとした「黒」”です。
また、塗っていると色が「紙を染める」という以上に、「紙に乗る」感覚を受けるのも特徴でしょう。これはこの靴クリームに染料だけでなく、傷をカバーする力に優れた顔料も多く配合しているからかもしれません。また、紙に塗るとキラッと独特な反射も垣間見えるのですが、これは蝋分が結構多いのかも? いずれにせよ名前に”Wax Color”付いているだけのことはある質感で色が表出してきます。とはいえクリーム全体としては粒子が細かいのか、使い心地・紙に塗る際の抵抗感には特段のクセは感じません。
なお、染料と顔料の違いについてを以下にまとめてみましたので、ご参考までに。
●染料:
・水溶性若しくは油溶性で、溶媒の中で「溶解」した状態で色を出します。
・透明性を備え、素材の中まで浸透するイメージで、「透過と反射」で色合いを感じさせます。
・色を濃くすると色合いもそれに比例し暗くなります。
●顔料:
・不溶性で、溶媒の中で「分散」した状態で色を出します。
・隠ぺい性を備え、素材の表面をカバーするイメージで、「反射」主体で色合いを感じさせます。
・色を濃くしても明るさには染料ほど大きな変化は起こりません。
次のページでは、これとは色の出かた・出しかたが対照的なものをご紹介!