気持ちが乗らない時には様々な理由があるもの。たとえば彼氏と喧嘩してしまったような場合、気持ちが乗らなくても当然。でも、これといった理由もなく、楽しくないといういが当たり前になっている場合、抑うつ性パーソナリティ障害の可能性には要注意!
今回は慢性的な抑うつ感が、あたかも、その人の気質の一部のようになってしまっている、抑うつ性パーソナリティ障害を詳しく解説します。
抑うつ性パーソナリティ障害の特徴
抑うつ性パーソナリティ障害の特徴は、慢性的に冴えない気持ちが、その人の物事に対する受け止め方、そして行動パターンにネガティブな影響を広く及していることです。例えば、生きている喜びを感じにくかったり、自分に自信が無くなっていて、将来に関して悲観的だったり、また、自信の無さが姿勢の悪さや表情の暗さといった外見にも現われやすくなっています。また、日常の物事に関しては、義務感や責任感といった面から向かい合う傾向があり、仕事一途になりがちで、私生活はかなり寂しくなってしまうことがあります。さらに、自分自身を責めやすいだけなく、他人のネガティブな面にも目が向かいやすくなります。そして、もし何か心配の種があれば、それに心がとらわれやすく、状況や環境の変化に素早い対処が難しくなりやすいです。
抑うつ性パーソナリティ障害の原因
抑うつ性パーソナリティ障害は実はDSM-IV-TR(精神疾患の分類と診断の手引)と呼ばれる、アメリカ精神医学会による精神疾患の診断マニュアルに新しく加えられたカテゴリー。抑うつ性パーソナリティ障害の発症率に関する正確な統計はまだ出ていないようですが、抑うつ性パーソナリティ障害は決して稀のものでは無く、その発症率には性差があまり無いと言われています。抑うつ性パーソナリティ障害が発症する、厳密な生物学的メカニズムは不明ですが、気分障害的な症状が、その特徴であることから、気分変調症やうつ病と同様の機序で発症している可能性はあります。
抑うつ性パーソナリティ障害の発症に関連する要因として挙げられる事は、まず心理的な要因として、幼い頃に肉親が亡くなられたなど、辛い体験があったこと。また、本人の気質に、自分自身を責めやすい傾向があり、物事に対して申し訳なさや罪の意識を抱きやすいこと。そして、生物学的な要因としては、うつ病の発症に関連深い脳内神経伝達物質であるノルアドレナリン、セロトニンなどの働きに何らかの問題が生じている可能性もあります。
抑うつ性パーソナリティ障害は基本的には精神科での治療が望ましい
気持ちの落ち込み具合を評価する際、日常生活上、誰でも時に経験するような気持ちの落ち込みを一つの端として、もう一つの端を日常生活に深刻な支障が現われやすくなってくるうつ病とすれば、抑うつ性パーソナリティ障害の気分障害的な症状のレベルは、その中間と見る事もできます。一般にパーソナリティ障害は抑うつ性パーソナリティ障害に限らず、その症状には本人の気質の一部と見なせる面もあり、たとえ精神科的な対処が望ましくなっていても、はっきり、それを認識しにくい場合もあるでしょう。しかし、自分に自信が持てず、生きる喜びを感じにくい状態には何らかの対処が望ましいものです。
もちろん人によっては、日々の冴えない気持ちに危機感を覚え、自力で解決を目指している方もいらっしゃるでしょう。例えば、自分に自信をつけようと、何らかの道において日々、精進されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。でも、どうして良いか分からなくなっている場合もあるかと思います。自分の気持ちは意外と自分では分かりにくいもの。それに長い間慣れきってしまっているため、自分の思考パターンや物事の受けとめ方が、自分の行動そして人間関係にどのように影響しているか、なかなか認識しにくいのではないでしょうか。
抑うつ性パーソナリティ障害の基本的な治療法は心理療法、そして個人個人の病状に応じて、場合によっては抗うつ薬などの薬物療法も望ましくなります。心理療法によって、自分の冴えない気持ちがいかに自信の無さや物事に対する悲観的な受け止め方につながりやすくなってしまうのか、自分の心理を理解していく事は、自分に適した他人との接し方を見出す手助けにもなるものです。
日頃、気持ちがすぐれない場合、その原因として健康がすぐれない、あるいは人間関係に悩んでいるなど、理由がはっきりしている場合も少なくないでしょう。しかし、もしこれといった理由やストレスもなく、日頃、気持ちがすぐれず、しかもそれが10代、20代の前半から今にいたるまで続いているような場合、抑うつ性パーソナリティ障害の可能性に要注意してください! 抑うつ性パーソナリティ障害はそれ自体、うつ病や気分変調症が発症するリスク・ファクターにもなるもの。基本的には精神科的な治療が望ましい事はみなさま是非、頭の片隅にでも置いておいてください。