ジャズ/シチュエーション別おすすめジャズ

サッカー大国ブラジルのジャズ、熱狂的ベスト3!

スポーツでは、サッカー大国として知られるブラジル。かの地には、熱狂的なサンバやクールなボサノヴァなど独自のラテン音楽が根づいています。でも、そんなブラジルにあっても、ジャズを演奏する音楽家は少なくありません。今回は、独特のパッションあふれるブラジル発のジャズ、ベスト3をご紹介します。

大須賀 進

執筆者:大須賀 進

ジャズガイド

サッカー大国として知られるブラジルには、南米特有の情熱的なリズムの音楽サンバやクールで都会的なボサノヴァなど、独自の音楽が根づいています。

そんなブラジルにおいて、早いうちからアメリカの音楽ジャズは、興味を持たれ、リスペクトされてきた歴史があります。今回は、日本のちょうど反対側にある情熱の国ブラジルのジャズベスト3をご紹介します。

第3位:セルジオ・メンデス&ボサ・リオ「イパネマの娘」より「プリミティブ」


イパネマの娘

イパネマの娘

 
セルジオ・メンデスと言えば、ご存知1966年の「マシュ・ケ・ナダ」の世界的ヒットで有名な人です。その後もセルジオ・メンデス&ブラジル66と言うバンドで次々にヒットを飛ばしたラテン音楽界の重鎮です。

そのセルジオ・メンデスがヒットを飛ばす前、セルジオ・メンデス&ボサ・リオと言う名のジャズバンドを率いていたことは、あまり知られていません。

今回ご紹介するCDは、その短命に終わったセルジオ・メンデス&ボサ・リオのアルバムです。そして、このCDには、もう一つサプライズがあります。それは、ボサノヴァ界の第一人者アントニオ・カルロス・ジョビンが全曲アレンジャーとして参加していることです。

ラテンとボサノヴァそれぞれを代表する音楽家が、ジャズを接点として結集した、若き日のブラジルオールスターズとでもいうべきアルバムです。

アントニオはしかも、代表曲の「イパネマの娘」や「デサフィナード」など収録十曲中五曲もオリジナルを提供している本気ぶりです。これらの曲の代表的な名演、スタン・ゲッツのムーディーなヴァージョンとは違い、むしろ真摯でハードなジャズを目指しているのが面白いところです。

主役のセルジオ・メンデスもオリジナルを二曲提供しており、そのうちの「プリミティーヴォ」がこのCDの聴きものになっています。

ラテンタッチのパーカッションによるイントロから、ホーンセクションによる印象的なテーマが始まります。ピアノとベースにより、この曲の雰囲気を決めるリフ(第二テーマのようなもの)が繰り返され、おのずと緊張感が高まります。そのリフに乗って、トロンボーンとサックスが硬派なサウンドでソロを取ります。

最後に、セルジオのピアノソロが雰囲気たっぷりに始まります。途中、ブラジルのギターの第一人者バーデン・パウエルの名曲「ビリンバウ」を引用し、ノリの良いソロは盛り上がりを見せます。

そして、好調なピアノソロが続く中で、曲はフェイド・アウトして終わって行きます。もう少し、セルジオのピアノを聴いていたいと思わせるフェイド・アウトが心憎い好演です。

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第2位:ヴィトル・アシス・ブラジル「デゼーニョス」(デッサン)より「アモール・デ・ナダ」


Desenhos

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第二位は、アルトサックス奏者ヴィトル・アシス・ブラジルのデビュー作1966年「デゼーニョス」(デッサン)からの「アモール・デ・ナダ」です。この時ヴィトルは二十一歳。

後に才能を惜しまれて早世するヴィトルですが、デビュー時にはすでに自分のジャズを奏でており、独自の世界観を持っています。音色はシャープ気味ですが、それがあたかもジャッキー・マクリーンのように心地よい響きに聴こえてきます。

不安定な揺れ動くサックスの響きが、青春の響きを思わせます。それが三拍子のゆったりとしたテーマとアドリブを、余計に愛おしく感じさせる要因になっています。ドラムのシコ・バテーラもスリリングな出色の伴奏でサポート。

この当時ジャズの本国アメリカに巻き起こっていた、ピアニストポール・ブレイらに代表される耽美的なフリージャズ。ブラジルにあって、いち早くそのテイストを取り入れたかのような、ファンタスティックな演奏です。

その曲の持つはかない風情に、四分弱の短い演奏が余計短く感じられ、何回でも聴きたくなる不思議な味わいにあふれています。

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第1位:モアシル・サントス「サウダージ」より「オフ・アンド・オン」


サウダージ

サウダージ

 モアシル・サントスは、日本ではあまり知られていませんが、アルトサックス奏者&作曲家でブラジルジャズ界の大物です。前述のセルジオ・メンデスもリスペクトを公言しており、今なお多くのカヴァーやフォロアーを生む、実力者と言えます。


その代表作と言える「サウダージ」はアメリカの本家ブルー・ノートレーベルよりリリースされ、モアシルの実力を知るには格好のCDとなっています。その中でも、有名なのがヴォーカルをフューチャーした「オフ・アンド・オン」です。

ここでソロを取っている女性ヴォーカルは、トロンボーン奏者でこのCDにも参加しているベニー・パウエルの奥方でベッシー・パウエル。思いつめたような歌声が、曲の持つサスペンスタッチの雰囲気をより迫力のあるものにしています。

また伴奏陣では、適度に不良な(ワルの雰囲気とでも言いましょうか)レイ・ピジーのテナーサックスソロが秀逸。

この曲は日本でも、何年か前に車のCMで流れたことがあり、聞き覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。時としてパーカッションばかりが目立ってしまいがちなラテンフュージョンとしては、メロディが洗練された極上の逸品と言えます。

モアシルがブルーノートに残した三枚のリーダー作の中では特にオススメの一枚です。

今回のブラジルの誇るジャズ特集はいかがでしたか。次回は、ブラジルがジャズの本場アメリカに及ぼした新しい波、ジャズボサの名盤をご紹介しますね。また、次回お会いしましょう。

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