役へのアプローチはどうされていますか?
奥村>新しい作品や役に取りかかるときは、僕はまず振りを身体に入れていきます。振りを入れたら音楽を覚えて、その上で曲をなるべく沢山聴いていく。そうすると次第に耳も慣れてきて、振りと音楽がひとつになる。
あとは、初演を踊ったダンサーにいろいろ聞くことも多いですね。技術的なこともそうだし、振りをもらってある程度わかってきたら、“これはどういう意味でやっているのか”という演技面を教えてもらいます。初演のキャストというのは振付家の意図を一番わかっているし、作者の気持ちに一番近い。だからこそ彼らの言葉を尊重して、なるべく吸収するようにしています。
『パゴダの王子』(2011) 撮影:瀬戸秀美
ビントレー監督ならではの特徴、スタイルといえば?
奥村>音にハメるのがビントレー監督ならではの特徴のひとつ。非常に音楽性のある方なので、音にとにかく敏感で、そこがすごく難しい。音にぴたりと合うようにカウントをつくっているので、ひとつでもミスをするとどんどん崩れてしまうし、付いていけなくなってしまう。ハマれば踊りにぴたりと合うから気持ち良いけど、そこに行き着くまでが大変なんです(笑)。
古典作品とコンテンポラリー作品では、奥村さんはどちらの方が好きですか?
奥村>うーん、どちらと決めるのは難しいですね……。もちろん慣れているのはクラシックの方だけど、踊るのはどんな作品でも楽しいし、踊ってみるとどれもやりきった感覚にはなる。どちらも難しいから、何を踊ってもやりがいはあります。そういう意味では、新国立劇場バレエ団は両方とも踊ることができるから嬉しいですね。