料理の持つ美しさ
かつて「料理の鉄人」という番組があった。和食、フレンチ、中華と鉄人が揃い、そこに名だたる料理人が挑む番組だった。撮影時に知らされる素材を元にキッチンスタジアムで繰り広げられる「バトル」は新鮮で、私も毎回食い入るようにみていたものだ。フレンチの鉄人は、当時渋谷の東邦生命ビルの最上階にあったラ・ロシエルの坂井オーナーシェフ。繊細で美しい料理は印象的で、ほとんど負けたことはなかったのではないか。スッポンのフラン 蝦夷ツブ貝と生青海苔ソース~ウエディングメニューより
それから15年は経ったか、時代は変わった。ラ・ロシエルも移転し、坂井シェフの弟子たちが店を切り盛りする。先日、桜の季節に開かれた友人の結婚パーティーで供された料理はもはやウエディング料理の域を突き抜けたものだった。それは生涯幸せを誓った友人と同様、永遠に記憶に残る料理といってもいい。ハレの日だけに印象度は高くなってしまったことを含みつつ翌週にディナーに出掛けてみた。
赤坂の喧騒から離れた静かなエリアだ
料理は現代フランス料理の現在そのままに、素材を丁寧に仕込み、加工し、皿を彩る。そこには変わらない「美」があった。