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春のシーズンにピッタリなスプリング・ジャズVOL.2

映画や、ショー、ブロードウェイなどのために書かれた曲の多いスタンダードには、春や四月にまつわる曲が多くあります。誰もがエネルギッシュに、恋に仕事に動き出すこの季節にピッタリなスプリング・ジャズを、二回連続でご紹介します。

大須賀 進

執筆者:大須賀 進

ジャズガイド

ようやく過ごしやすい季節になり、日本を代表する花、さくらを初めとして、新芽や花が咲き乱れるこの春。スタンダードを中心として、春にまつわる曲も多いのがジャズです。

そこで今回は、春のシーズンにピッタリなスプリング・ジャズを二回連続でご紹介いたします。VOL..2の今回、最初にご紹介するのはクールなギター演奏です!

ギター奏者 ジミー・レイニー「A」より「サム・アザー・スプリング」

 

A

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「サム・アザー・スプリング」は、ピアニストで作曲家のアイリーン・キッチングスがビリー・ホリデイのために書いたといわれるバラードです。

それも、夫君の裏切りでの離婚による痛手。それがモチベーションとなって作曲されたものというのですから、まさに、ビリー・ホリデイに打ってつけの曲とも言えます。

このジミー・レイニーによるクールな演奏も、どこか深い孤独を感じさせるものです。テーマ部分はオーヴァーダビング(多重録音)により、ジミーは自分のギターで伴奏をつけています。そのせいかまるで双子のギタリストがいるかのように聴こえます。

ジミーのギターのメロディラインとピアノのホール・オーヴァートーンとで奏するテーマ部は、ともに派手さの無い乾いた音色が特徴です。それだけに、各人のサウンドがハッキリ聴こえます。寄り添ってはいるものの、それぞれが自身の考えによって立つ、自立した関係を思わせるイメージです。

テーマの後、ジミーによるギターのアドリブに入ります。ここは多重録音ではなく、じっくりと妙技を聴かせてくれるところ。ジミーは、徐々に盛り上がり、水底を思わせるほの暗い部分より浮き上がり、少しずつ希望の光のようなものが見えてくる演奏のように感じます。

それは、作曲者アイリーンがこの曲に込めた思いとシンクロしているかのようです。過去の辛いことは忘れ、自分をしっかり持って今年の春こそは幸せにと願う、この曲の持つ本質を表しているようです。

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マイルス・デイヴィス「マイルス・デイビス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ」より「スウィング・スプリング」

 

マイルス・デイヴィス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ

マイルス・デイヴィス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ

このアルバムは、後に「帝王」と呼ばれ、ジャズ界を代表するトランペット奏者になるマイルス・デイヴィス。「ラウンド・ミッドナイト」の作曲者としても有名なピアノ奏者のセロニアス・モンクMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)で有名なヴィヴラフォン奏者のミルト・ジャクソンという豪華な顔合わせです。

俗にマイルスの「ケンカセッション」として有名な録音です。マイルスとセロニアスがお互いの演奏をめぐって険悪な一触即発の状態になったといわれているものです。

その内容は、マイルスの自伝によるとマイルスが先輩のセロニアスに自分のソロの時はバッキングをせずに、休んでいてくれと頼んだということです。決して、ケンカではなくて、よくあることだとマイルスは言っています。

実際、ミルトのバックでは盛大にコンピング(ピアノのバッキングの事)しているセロニアスがテーマ部を除き、マイルスのソロになると一音たりとも鳴らしていません。

噂の通りにケンカではなかったと言え、マイルスにとっては先輩にあたるセロニアス。それにセロニアスの曲「ラウンド・ミッドナイト」を頻繁に演奏しており、この後出世作ともなるマイルスが、セロニアスに弾かないでくれと言ったのは事実です。ケンカではなかったにしても、場は緊張感に溢れていたのではないでしょうか。

演奏を聴く限りは、このマイルスの判断は大正解。すっきりとしたリズム陣のみで、ベースのウォーキングに乗せて繰り広げられるマイルスのソロは、クールで冴えています。音楽に妥協のないマイルスの面目躍如と言ったところです。

次のページでは、美人シンガーの伴奏に一所懸命になった超有名ジャズバンドの登場です!

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