キューカンバーサンドイッチのお話
勉強会のランチボックス
ヴィクトリア朝時代のイギリスでアフタヌーンティーの習慣の中で生まれたティーサンドは、上流階級の婦人が食べやすいように薄くスライスした食パンにシンプルな具材を挟んだフィンガーフードですが、これは日本の定番サンドに影響しています。
日本の食パンはフワフワしているので、ティーサンドを作ろうと思ってもなかなか10mm以下の薄さにきれいにスライスするのは難しいですが、少し厚めでもいいのではないか、とナガタさんは言います。欧州の食パンは粉が違っているので生地はしまっていて固め。分厚くすれば口中の水分をとられて食べにくいものなので薄くスライスするのです。日本のパンはしっとり軽やかだから、臨機応変に考えます。
ティーサンドでは、お鮨のカッパ巻きのような、シンプルなキューカンバーサンドが定番ですが、19世紀にキュウリが高級食材だったと聞くと納得です。日本のパン屋さんでは最近見かけなくなっていますが、ていねいに作るとおいしいので、あらためて見直したいサンドイッチのひとつ、とナガタさん。キュウリはスライスして塩とホワイトペッパーを振り、白ワインビネガーでマリネしておく。そのひと手間がしみじみしたおいしさに繋がります。
サンドイッチのソースのコツ
サンドイッチのおいしさにはパンと具材のほかに、ソースが重要な役目を果たします。定番のソースに少しだけナガタさん流の変更を加えて、おいしくするポイントを教えてもらいました。BLTサンドイッチ
BLTサンドはアメリカ発、ホテルのルームサービスでも定番になっている、ベーコンレタストマトのサンドイッチです。ソースはマヨネーズばかりではありません。今回提案されたのは市販のシーザードレッシングにパルメザンチーズパウダーをたっぷりかけたもの。水分がパンに浸み出てしまうのを防ぐには、粉状の素材を加えると粘度が出て漏れにくくなります。和風のソースならすりゴマなども良いそうです。マヨネーズ味ばかりでは飽きてしまうし、これはいいアイデアですね。
クロックムッシュはベシャメルソースを使いますが、ナガタさんは個人的にこのヘヴィーなソースが苦手なのだとか。「でもこういう仕事では自分の味覚を大事にしたほうが良いのです。自分が好きな味のほうが、人にも伝わるからです」。ベシャメルソースはだからいつも軽め。夏など、あっさり食べたい時にはソースを軽めにすることで、その上にのせるチーズも少量でおいしそうに溶けてくれるのだそうです。
フルーツサンド
そしてフルーツサンド。かの人気店、「セントル・ザ・ベーカリー」のフルーツサンドも実は彼女のアイデアがたっぷり盛り込まれています。生クリームにマスカルポーネを混ぜること、そしてパンの片面には軽くカスタードを塗ることで味に奥行きがでて、最後まで飽きずにおいしく食べられます。