マネジメント/マネジメントの基礎知識

レピュテーションリスクとその防御策としての情報開示(2ページ目)

リスク管理のその3として、近年高まるレピュテーション・リスクについてお送りします。レピュテーション・リスクとはいわゆる風評リスクのことですが、単なる人の噂が一企業の存続を危うくするような事態に陥れることもあるのです。また、近年続発する組織内に秘められた不祥事が内部告発で外に出るという事態は、最も危険度が高いものになります。レピュテーション・リスクの内容とその対策について解説します。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

情報開示と正直経営が風評リスクを回避する

また近年で注目すべきは、組織内に抱え込まれていた企業不祥事等の情報が、内部告発によりいきなり表に出ることで企業の存続を危うくするケースが加速度的に増えている、という点です。すなわち、現在のレピュテーション・リスクの根源は、その多くが内部告発リスクであると言っても過言ではないのです。

解説

どんな大企業も内部告発は存続にかかわる

最も有名な実例を挙げるなら、電力をはじめとしたアメリカの巨大エネルギー企業エンロンの事件でしょう。エンロンは長年にわたる杜撰な会計処理や役員の利益相反行為を、一従業員が告発文書を公表したことをきっかけとして信用が急激に失墜し、事実発覚から1年弱で企業破綻に追い込まれたのでした。同時に、巨額の粉飾を見逃し隠蔽工作をはかった大手監査法人アーサーアンダーセンまでもが、解散の憂き目に会ったのです。日本で記憶に新しいのは、2011年のオリンパス社の長年に及ぶ不当会計処理事件。これも内部告発による雑誌記事をきっかけとして、前経営陣に退任を迫ったウッドフォード社長(当時)が取締役会で解任されたことで一気に事件が大きく報じられ、財務内容悪化に対する懸念とガバナンスの不能を嫌気されオリンパス社の市場の信頼は一気に失墜。存続危機すらも感じさせる事態に至りました(その後ソニーと業務提携により事態収拾)。

これらの事件に学ぶ、内部告発によるレピテーション・リスクの回避法は、なによりもまず不祥事の組織内隠蔽をしないことに尽きます。同じ不祥事発覚でも、企業の自主的な公表によるものと内部告発による発覚では、利用者や市場関係者印象には雲泥の差が生じるのです。また、内部告発者には日頃の組織内の風通しに対する不平不満や不祥事対応への進言を無視されたなどの動機が、必ずと言っていいほど見当たります。内部告発情報が組織外に流出する前の最後の砦として、経営とは切り離された第三者運営による通報システム設置なども内部告発リスク軽減策として講じる必要があるでしょう。

いずれにしましてもレピュテーション・リスクの管理を考えるとき、企業経営にとっては情報開示を怠ることなく組織内外に対して「正直」であることが何よりも大切であると、経営者は常に肝に銘じてマネジメントをおこなうべき、という結論の至るのです。
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