人の噂が企業を倒す

リスク管理のその3として、近年その対策の重要性が急速に高まりつつあるレピュテーション・リスクについて説明をしておきたいと思います。レピュテーション・リスクとは評判リスクまたは風評リスクと言われるもので、企業などの組織のレピュテーション(評判)に起因して経営にダメージを与えるリスクのことを指しています。基本的にはリスクにリスクテークの余地はなく、リスクヘッジのみが存在するという性質からは、広い意味で「危険性」のリスクに属するものと言っていいでしょう。

解説

噂や報道が企業を倒産に追い込むこともある

では具体的にどのような風評リスクがあるのか、順に見ていきます。まず個別企業において業績の悪化等による世間や市場における倒産懸念が巻き起こり、取引先、購買者、利用者や投資家が急速に離れていくことで企業経営が危機的な状況に陥るのがその典型例と言えるでしょう。業績の悪化がレピュテーション・リスクの引き金になるのは、業績開示義務のある上場企業には限りません。例えば、民間の信用調査機関の評価下落や、もっと身近なところで言えば小売店や飲食店でサービス内容が急に低下した等の状況から経営状況が悪化しているといった噂が広まります。そのことで周囲から取引を敬遠され倒産の憂き目に会うといったケースもまた、レピュテーション・リスクと言えるのです。

個別企業の業績以外にも業界全体の業況低迷が、個別企業のレピュテーション・リスクにつながるケースもあります。バブル経済崩壊後の90年代後半以降、住専処理に端を発した不良債権問題による業況悪化の中で、銀行界を襲った金融危機はまさしくそれでした。報道やクチコミによる噂が噂を呼び取り付け騒ぎに近い状況までが起きるに至り、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、足利銀行などの銀行が相次いで倒産に追い込まれたのでした。「絶対につぶれない」と言われ続けてきた銀行神話は、レピュテーション・リスクの前にもろくも崩れ去ったのです。

なぜ、噂レベルの話が一転一企業の存続に関わるようなリスクになるのでしょう。最大の原因は日頃の情報開示の不足です。悪い情報を明け透けにして評価を落としたくないと思うあまり秘密主義になり、その情報が何かの拍子で裏から漏れた時などに、「知らなかったけど、そういうことだったのか」という衝撃度は一気に強くなり、企業イメージが受けるダメージは情報を小出しにしてきたケースに比べて格段に大きくなるのです。金融危機における銀行の例は、情報面で比較的閉ざされた印象が強かった企業ゆえダメージが大きかったと言えるでしょう。