アルトサックス奏者、矢野沙織「サクラ・スタンプ」より
「ショウナフ」


サクラ・スタンプ

サクラ・スタンプ

矢野沙織はこの「サクラ・スタンプ」が、三作目のリーダーアルバム。その彼女はこの録音時は、なんと17歳の高校生です。まぶしいばかりに16歳でデビューし、その勢いのまま、年齢のままに、やんちゃな感じが魅力のアルトサックス奏者です。

そんな彼女が選んだスタイルが、モダンジャズの本流「ビ・バップ」だったというのが、二度驚きです。細かなコード進行を縫うようにアドリブを繰り出さなければいけない、一筋縄ではいかないジャズスタイルを、矢野は16歳という若さで、大人以上に表現して見せました。

矢野のプレイには、アルトサックスの巨星チャーリー・パーカーはもちろんですが、キャノンボール・アダレイからの影響も、色濃く感じられます。弾けんばかりに表現する彼女の演奏には、おもわず感嘆と微笑みが浮かんでしまいます。

しかも、矢野が一番素晴らしいのは、誰よりも彼女が演奏を楽しんでいるということです。こんなにも「楽しそうに吹いている」と感じさせてくれるプレイヤーはそう多くはいません。

本来「ビ・バップ」の本質とはそんな演奏することへの楽しさだったはずです。「ビ・バップ」は、コマーシャルな仕事を終えたミュージシャンが、仕事の後の深夜のジャムセッションによって確立したともいえる音楽です。

一晩中、仕事ではない演奏を繰り返し、それがムーヴメントにまでなったのは、ひとえにミュージシャンの努力によるものです。でも、その努力や頑張りの活力となっていたのは、ただ「好きな音楽を演奏することへの喜び」であったことは間違いないところです。

楽しんでいるからこそ、若いミュージシャンが、時間など関係なく、努力を惜しまず、寝食を忘れることができたのです。矢野には、そんなモダンジャズの黎明期の熱い思いが宿っているかのようです。

この曲「ショウナフ」もチャーリー・パーカーとディジー・ガレスピーの共作で、初演は1945年。その演奏は、二人ともに「ビ・バップ」を作り上げた自信と喜びにあふれたものです。

その決定盤のもつ熱さに負けないくらいの熱気をもって、フロントの矢野とトランペットのニコラス・ペイトンが一気に疾走します。スカッとした清涼感にも似た心地良さにあふれた快演です。

デビューして早くも10年が経った、これからの矢野沙織の益々の活躍が非常に楽しみです。

一所懸命がんばっている女性ジャズプレイヤー特集はいかがでしたか? 今回ご紹介した以外にも、もちろんまだまだ期待の女性プレイヤーはたくさんいます。また次の機会にご紹介していきますね。それでは、次回またお会いしましょう!

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