冬の夜にゆっくりと読んであげたい 『しろいゆき あかるいゆき』
雪国に育つ子もそうでない子も、子どもたちはみんな雪が大好きですね。大人たちは「寒さの中で風邪をひいたりしないかな……」と心配したりしますが、子どもは、そんな大人の心配などお構いなしで、元気に飛び回ります。アメリカで作られたこの絵本の中の子どもたちも同じです。雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり、日本の子どもたちと同じように、雪遊びをを楽しんでいます。そんな子どもたちの姿を軸に、雪降る予感から春の訪れまでの雪国の穏やかな暮らしを描いた絵本『しろいゆき あかるいゆき』をご紹介します。雪が大好きな子どもたちに、冬の夜にゆっくりと読んであげたい作品です。
雪降る予感から雪国の静かな冬が始まります
おまわりさんの奥さんが、「つま先が痛い」と言いました。実は、奥さんのつま先が痛むと、決まって雪になるのです。でも、雪が降るのがわかるのは、おまわりさんの奥さんだけではありません。うさぎや子どもたち、郵便屋さんや農家の人たちだって、みんな雪になる気配を感じています。けれども、雪の最初のひとひらは、いつも誰も気づかない時に落ちてきて、やがて空は柔らかな粉雪でいっぱいになっていきます。冬が深まっていくにつれて、空は灰色に染まり、雪は白く冷たく輝いています。それでも、絵本全体から感じるのは、真冬の厳しい寒さではなく、何とも言えない温かさ。その理由は、絵本に描かれている人々の暮らしぶりにあるように思います。
絵本では、元気いっぱいの子どもたちだけでなく、雪かきや、風邪予防の為のからしの湿布など、雪国ならではの人々の生活が紹介されているのですが、登場人物たちはみな、雪に難儀はするものの雪を嫌ってはいないように見えるのです。雪に対する人々のこの温かな想いが、そのままこの作品の体温になっているのかもしれません。
春の予感が明るく温かな読後感を残します
やがて、やって来る冬の終わり。冬の終わりは、同時にこの物語の終わりでもあります。お話が終わってしまうのは寂しい……と感じる小さな読者がいたとしても、心配はいりません。冬の終わりは、春の始まり。人々が待ち望む新しい季節の到来を、1羽のこまどりが告げてくれます。明るく温かなエンディングが、小さな読者に心地よい余韻を残します。そして、できることなら、小さな読者だけでなく、その読者を見守るご両親にも、春の予感にも似た温かな読後感を感じていただけるとといいなあ…… コルデコット賞受賞作品です。
【書籍DATA】
アルビット・トレッセルト:作 ロジャー・デュボアザン:絵 えくにかおり:訳
価格:1325円
出版社:ブックローン出版
推奨年齢:5歳くらいから
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※「 2月 心が温かくなる5つの雪物語」 でも、『しろいゆき あかるいゆき』をご紹介しています。