ワークショップを拝見していて、勅使川原さんがかけた言葉により、彼らがグンと伸びやかになっていく姿が印象的でした。
勅使川原>僕は常に“いいですよ”と言います。“そうじゃない、そういうのはよくないぞ”とは言わないし、そういう目つきでいたらたぶん彼らは緊張すると思います。ヘタにやってしまってもそれでいいんだ、というやり方をしているんです。何故褒めるかというと、もっとやった方がいいから。“ダメだよ”と言うと、ヤル気がなくなってしまう。ダメという視点で見ずに、何がいいかという視点で見る。間違ったなと思ったら、“いいですよ、間違って良かったね”と言う。間違っていたということに気が付いたから、いいんです。気が付けばいいんだ、ってことですよね。僕ら講師の役割は、彼らがちょっと工夫して、何かやり直そうとした瞬間を見逃さないで指摘してあげること。“今気がついて直そうとしたでしょう、そこがいいよ”と。それだけで、どうしろとは言わなくていい。
第二期『U18ワークショップ』のクラス
僕は稽古中、あまり動きを見せていません。パリ・オペラ座バレエ団との作業でもそうでしたが、僕は振付を踊って見せないんです。“こうしたら”“ああしたら”“こうやって”と言いながら、新たな動きを作っていく。他のダンスの振付とは違うことがやりたいので、価値観をその場その場で作っていきます。みんなには“その時起こっていることから作品を作っていきたい、それをわかって欲しい”と伝えます。先に動きを作っておいて、できる・できないということはやりません。“みんなで初めての発見をしよう、力を合わせよう”というやり方をします。僕にとっては、その方が面白いんです。
第二期『U18ワークショップ』のクラス。指導にあたる勅使川原氏
パリ・オペラ座バレエ団のオーレリーも言っていましたが、我々は尊敬し合っているんです。『U18』の若い子たちには、尊敬といってもなかなかわからないかもしれない。わからなくてもいい、お互いに感じ合うことが大切だと思う。それも片一方からの尊敬ではなく、互いに尊敬・尊重の気持ちがなければつまらない。そういう意味では、パリ・オペラ座バレエ団での経験はとてもいいものになったし、『U18』のような若い子たちとの経験もとても大事だと思います。大人の、プロの、という言い方はあるけれど、優越はない。このプロジェクトで彼らはとても一生懸命やっていて、僕はそれを尊敬するし、尊重しています。