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勅使川原三郎 U18プロジェクト インタビュー

東京芸術劇場主催・勅使川原三郎監修による『U18ダンスワークショップ・プロジェクト』。2012年の第一期を経て、2013年秋より第二期をスタート。2014年1月には東京芸術劇場でデモンストレーション公演を開催し、半年間に渡る稽古の成果を披露しています。勅使川原氏に、『U18』の狙い、展開についてお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

バレエガイド


2012年よりスタートした『勅使川原三郎ディレクション U18ダンスワークショップ・プロジェクト』。18歳以下の少年少女を対象に、ワークショップを開こうと考えたきっかけをお聞かせ下さい。

勅使川原>まず若い子たちがダンスを始めようとするとき、クラシック・バレエはあちこちに教室があって、システムがきちんと出来ていますよね。しかし僕がやっている創作ダンスの場合、なかなか若い子たちと出会う機会がない。とはいえ僕のメソッドは振付を覚えさせるものでもないし、形を教えるというよりは、身体の中で何が起こっているか見つけ出していくもの。身体が実感することを求め、それを組み立てていくことによって、動きが生まれてくるというやり方なので、老若男女・経験の違いも問わず受け入れられます。

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第二期『U18ワークショップ』のクラス。指導にあたる勅使川原氏


『U18』の若い子たち、今回は12歳から18歳でしたが、身体の成長期としてはこの年代がちょうど適正かと思っています。彼らはまだ筋肉や関節が柔らかく、身体が出来上がってない。だからこそ、より素直に受け入れることができると思うんです。身体というのは、一度記憶したことをまた次に動きとして利用することに慣れているもの。記憶したことが、その人にとって一番動きやすいものになる。一般的には、記憶させようとすることが、練習や稽古、ワークショップになることが多いと思います。しかし僕のメソッドはそうではなくて、“身体から感じることは何か”ということを時間をかけて探っていきます。そこで“確かに”覚えていく。覚えていくことは、常に変化を生んでいくことであり、連結されているものでもある。

例えば、身体を伸ばし・緩めるという動作は、身体の動きの連なりを発見することができる。カウントで動きを決めるのではなく、身体の流れとして生きている身体を実感していくんです。それを中高生のような若い時期に深く実感することは、想像力の源になる。

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第二期『U18ワークショップ』のクラス。指導にあたる勅使川原氏


身体がいかにして動くかがわかれば、物事に触れたとき“あ、これはこういう風に成り立ってるんだ”とか、“これはこういう風に見ることができるんだ”と、あるいは物を読んだとき“これはこういうことなのかな”と、広がりが出てくる。汚れのないアンテナのように身体が敏感であるならば、現実的なこともそうでないことも、身体的に受け取ることができる。器としての身体があれば、考える力が増してゆく。考えるということが想像力を生む。文学も音楽も料理を作る人でも、他の芸術表現でもそう。まず身体が基になっていること、身体性があることが大事だと僕は思っているんです。

我々の親の時代には戦争がありました。古代は素足で歩いていたりと、さまざまな身体的苦労があった。パソコンはなく、手で文字を書き、またそれを他人に正確に読んでもらわなければならない。当時は、ダンスや演劇をやっていたり、いわゆる身体表現をする人は少なかったでしょう。だけど、より身体的に生活してた。身体の動きと生活が、もっと密接だったと思うんです。

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第二期『U18ワークショップ』のクラス


今はいろいろ便利になっているので、あまり身体を動かさないようになってる。だから少しでも身体を使うと、“大変だ”“疲れたから辞めよう”となってしまう。僕は逆に“疲れるからこそもっとできるんだ”“疲れを越えてもっとやらなきゃいけないんだ”ということが日常生活の中にあると感じていて、またそうしたことが、単なる日常の繰り返しではなく、想像力、物を作る基になると考えています。身体が労働として使われるのはとても知的なことだし、知的な物の知的な発露、知的な表現の基になることでもある。人を尊敬することの中にも、身体的な感覚が潜んでいたり、身体的に人を尊重することがあるような気がします。

人間である以上身体を持っている訳だから、時代の変化に関わらず、どんな気持ちだろうと、必ず身体はそこにある。身体がいかに使われるか、“あ、身体ってこうやって動くことができるんだ”と細かく感じることが、想像力、今を考える基になる。それはとても大事なことだし、中高生の年代から経験として感じることは非常に重要だと思う。またそれが、『U18』を始めるきっかけになったものでもあります。

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第二期『U18ワークショップ』のクラス。指導にあたる勅使川原氏


僕は『U18』を始める前からさまざまなワークショップを行っていて、その中のひとつに、やはり10代の男女を対象にした『空気のダンス』というプロジェクトがありました。日本はもちろん、ヨーロッパなど海外でも教育プロジェクトを続けています。ロンドンでは、生活が安定している家庭の子供と下町の少し荒れた地域の子供たちが一緒にワークショップをして、最後に作品を作り、公演をした。別の機会では、20人以上の盲目の少年少女たちを対象にしたワークショップをやったこともあります。

若い子たちとワークショップをしていく中で感じたのは、彼らは知識はないけれど、身体を使うとその人が何を感じているかが言葉ではなく身体にあらわれてくるんだ、ということ。それを大人の側が良い・悪いと判断したり、この人は有効だ・有効じゃないと点数を付けるのではなく、ひとりひとりがどういうものを持っているかという質の違い・質感の違いを見ていく。そうすることで、彼らが何を言いたいかが言葉ではない部分であらわれてくるのがダンスだと思うんです。

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第二期『U18ワークショップ』のクラス


『U18』の若い子たちは、まだ不確かではあるけれど、まるで将来が見えるかのようなものをすでに持っています。それはとても大事なことだと思う。人間というのは、突然変化するものではないと僕は考えていて。何かしら、その兆候はある。持って生まれたものがあって、もしそれをやりたいのなら、できるようにしてあげるべきだと思うし、チャンスを与えるべきだと思う。やってみて、“無理だな”と諦めるのはしょうがない。だけど、機会を作ることはとても大事だし、そこではやり方を明確にしなければいけない。あやふやだと、戸惑わせることになってしまう。そういう意味でも、メソッドを基礎としたやり方、ダンスという方法論を持ち、明確に彼らを導いていくことは意味があると考えています。

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