平均寿命と健康寿命には時間差がある
寿命が長くなるにつれ、現役引退後の老後(セカンドライフ)も長くなっています。今後、90歳超えは当たり前の世の中になりそうなので、セカンドライフはますます長くなる模様です。そんな長寿化の中、注目してほしいことがあります。平均寿命と健康寿命には時間差があることです。平均寿命とは、みなさんもよくご存じの命が尽きる年齢です。一方、健康寿命とは、誰の世話にもならず自立して生活できる年齢のことです。その差の年数は、軽重はともかく、誰かのケア(手助け・介護)が必要な期間になります。
つまりセカンドライフは、自立期間とケア期間で構成されるということ。ケア期間を「サードライフ」と呼ぶ人もいます。健康寿命のデータは2021年5月時点、2016年のものが最新のため、平均寿命もやや古いですが同年のものと比較すると(それでも実測値と予測値で整合性はとれていませんが)、ケア期間は男性が約9年、女性が約12年です。(下図参照)
また、平均寿命は2019年では男性81.41歳、女性87.45歳ですが、同年の健康寿命(未発表)との年齢差もほぼ同様と考えられています。
これまでのセカンドライフのマネープランは、どちらかというと、自立期間しか考えていませんでした。患わずに亡くなる、いわゆるピンピンコロリで人生を終わる、あるいは患ってもケアが必要な期間は短くて、マネープランに大きな影響を及ぼさないケースが多かったからです。
また夫婦の場合、夫のほうが早く亡くなって遺族年金を残すため、老後資金は遺族年金で不足する妻の生活費+アルファが残っていれば、大きな不安や問題はありませんでした。
しかし、今もこれからも、男性も長生きするようになり、女性の寿命も延びそうですから、老後資金の必要額は大きくなります。そして、ケア期間にかかる費用も考慮するとなると、いくらお金があれば安心なのか……見当をつけられないのが実情です。
それに、セカンドライフはお金の問題だけではなく、気の持ちようや生き方そのものを見直さないと、不安を軽くすることはできそうもありません。では、どう考えればいいのか。「公助」「共助」「自助」の3方面から、私見を述べさせていただきます。
「公助」は徐々にパワーダウンしていく
セカンドライフの「公助」とは、主に生活費のベースとなる公的年金、介護が必要になったときの介護保険、医療を受ける際の健康保険です。少子高齢社会が定着した昨今、公助が徐々にパワーダウンしていくのは必至です。現役世代にこれ以上、過重な負担をかけるわけにはいかないからです。ですから、もらえる年金額は減り、介護保険と健康保険は保険料負担が上がるのに給付は下がっていきます。そして、物価上昇と消費税増税もあいまって、セカンドライフの生活は厳しさが増す一方になるでしょう。これはいたし方ないことなので、「そうなる」と覚悟するしかありません。その上で、「共助」と「自助」をどうしていくかを考えます。
人とのつき合いを密にして「共」に「助」け合いを
2つ目の「共助」は、兄弟姉妹などの縁者、ご近所さん、友人などとの人づき合いを密にして共に助け合うことです。つき合う人は同世代でも異世代でもかまいません。とかく、年をとるほどに友人は少なくなり、交際範囲は縮小していく傾向があるので、意識して人づき合いを広げるようにしましょう。人に会う機会があると、身なりにかまったり、しゃべったりするので老け込み防止効果が期待できそうです。それに、ちょっとした用事を頼んだり頼まれたりする習慣をつけておき、軽度のケアなら公助の力を借りなくてもすむようにしたいもの。何より、誰かとつながっている、何かがあったら駆けつけてくれる人がいるのは、心強いといえます。
ただし、一方的に助けてもらうばかりにならないようにしましょう。助けてばかりの相手は不満が募り、人間関係がぎくしゃくするからです。助けてもらったら助ける……。この循環が大切です。もし、身体がきかないなどで、助け返すことができなければ、せめて「ありがとう。いつも感謝しています」の言葉で代替を。
そして、お金の貸し借りは人間関係を悪くするモトなので、これはやめましょう。それに、おつき合いにかかるお金は、割り勘を心がけてください。
とはいえ、コロナ禍で、今まで当たり前だったつき合いが難しい状況であることも確かです。しかし、そういう時代だからこそ、メールやリモートなどを活用しながら、人との交流が失われないよう、意識すべきだと考えます。
お金とケアで迷惑をかけないため、あらゆる「自助」努力を!
3つ目の「自助」は、経済面と健康面の努力です。セカンドライフが長くなるほど、生活費、レジャーなどのゆとり資金、ケア費用など、必要な老後資金はかさんでいきます。経済面の自助努力には、次のようなことが考えられます。会社員は定年退職、自営・自由業の人は現役引退までに老後資金として、1000万円単位のお金を貯蓄しているはず。ですが、早い時期から貯蓄の取り崩し生活をすると、最後までお金がもたないかもしれません。
少しでも、取り崩し生活を先延ばしにするために、身体が動くうちは、何でもいいので働き続けることです。収入が少なくても、遊んでいるよりはましです。また、住まいが広すぎたら賃貸にして、その家賃より安い住まいに住んで差額を生活費の一部にする、投資信託や株などの投資でお金に稼いでもらうことも考えましょう。
働かなくても大丈夫という人は、ボランティアや趣味でも何でもいいので、楽しみや夢中になれるもの、人のために自分ができるものを見つけてください。頻繁な外出、不要不急ではない外出はしにくい状況ではありますが、そこは工夫できるはず。また、働くにしてもポランティアにしても、自身の健康を害さない程度のほどほどのさじ加減で行うことをお忘れなく。でないと、健康面の自立を果たせなくなって、本末転倒になってしまいます。
さて、健康面の自助努力は、自立期間をできるだけ長くするため、ケア状態になっても軽くすむよう、健康管理を怠らないこと、身体を動かすこと、頭(脳)を鍛えることを心がけてください。
とにかく、今の中年以上の世代は、子ども・孫世代にお金とケアで迷惑をかけられないので、あらゆる努力をする必要があります。それが、老後の不安を軽くするための考え方のかなめだと思います。
※All About生命保険ガイド・小川千尋さんの記事を編集部が最新情報に加筆
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