ドイツ人の名前の由来
ドイツ人の名前の由来
日本ではアニメや漫画でドイツ系設定のキャラも登場することが多いため、そこから知る向きもあるかもしれません。
例えば『新世紀エヴァンゲリオン』のヒロイン・惣流(式波)・アスカ・ラングレーもドイツ系という設定。ただし彼女の「アスカ」という名前は一般的なドイツ名ではありません。
一方、『北斗の拳』のヒロイン「ユリア」はドイツ系ではなさそうですが、その名のほうは最も人気のあるドイツ語名の一つ。かのシェイクスピア『ロミオとジュリエット(Romeo and Juliet)』もドイツ語圏では一般に“ Romeo und Julia“(ロメオとユリア)と称されます。つまり「ユリア」とは英語での「ジュリエット」に対応するドイツ系名、というわけです。
ドイツ語と他の言語の名前、つづりと読みの関係は?
「ドイツ系名」の多くは英語系・フランス語系等なので、ヨーロッパ文化圏で他の言語での名称と相関・対比関係があります。では主要欧語で知られた名前はそれぞれどのような対応関係にあるのでしょうか。確認してみましょう。「ハインリヒ」「ヘンリー」「アンリ」のように読みでは対応が分かりにくい名も、アルファベット表記を確認すれば同根と分かりますね。つまりドイツ系名とはご覧のように、語頭のst-が「シュト」となったり、語尾の-gが濁らなかったり、読みがドイツ語の発音規則に倣うものを一般に指すわけです。
また、こうした名前には言語による相違のみならず、男性版・女性版の違いも見られます。男性名Martin(マルティン)の女性版がMartina(マルティナ)、Julius(ユリウス)だとJulia(ユーリア)といったふうに、女性版の多くは語尾に-aを付すことが特徴となります。
聖書や神話に由来する名前
歴史的にもやはり多いのが聖書由来の名前。ヘブライ語由来名は旧約、古代ギリシャ語のほうは新約聖書に縁ります。
ちなみにカトリック教会等ではこうした名前が洗礼名として与えられ、誕生日とは別にNamenstag(ナーメンスターク/聖名祝日)として祝われることに。例えばJohannes(ヨハネス)だと12月27日がその祝日に当たります。
聖書以外に由来する伝統的な名前も挙げておきましょう。ギリシャ・ローマやゲルマンの神話・伝承によるものもあり、その多くはご覧のように猛々しい原義を特徴としています。
ドイツにおける流行の名前は?
では、近年人気があるのは、どのような名前なのでしょうか? こちらはドイツ、オーストリア、スイス(ドイツ語圏)での、2012年新生児名の人気トップ5リスト。Luca/ Luka/ Lukas(ルカ)、Paul(パウロ)、Tobias (トビアス)、David(ダビデ)、Noah(ノア)、Hanna(h)/ Anna(アンナ)、Lea(h)(レア)、Sarah(サラ)と、聖書由来の名前が多く見られます(括弧内は由来となった聖書人名)。
MiaがMaria(マリア)、BenがBenjamin(ベンヤミン)、LenaがMagdalena(マグダレナ(マグダラのマリア))の短縮形と考えれば、その数はさらに多くなりましょう。もちろん「エマ・ワトソンにちなんでEmma!」なんて例もありそうですが、「キラキラネーム」が話題の日本に比せばやはり保守的な印象を受けます。
『銀河英雄伝説』の登場人物名はゲルマン由来
小説やアニメで根強いファンを持つ『銀河英雄伝説』。この作品は主要登場人物がドイツ系の名前であることで知られています。いかにもドイツ的な響きというのを作者が意識したのか、各人物の名もゲルマン由来のものが大部。そのためSieg(ジーク/勝利)+Frieden(フリーデン/平和)からなるSiegfried(ジークフリート)、Wolf(ヴォルフ/狼)+Gang(ガング/足取り)でWolfgang(ヴォルフガング)等、ドイツ語学習者にとってその原意が分かりやすいのも特徴となっています。
名前の短縮形・愛称形についても触れておきましょう。元となる名前が簡略化された、ニックネームのような名称がそのまま名とされている例です。例えばFritz(フリッツ)は、プロイセン王や哲学者ニーチェの名としてお馴染みFriedrich(フリードリヒ)の愛称形。またAdalbert(アーダルベルト)は、アインシュタインやシュヴァイツァーの名として知られた短縮形Albert(アルベルト)の原型といえば分かりやすいでしょう。
『進撃の巨人』の登場人物名は多文化的
もう一つ、ドイツを舞台としているらしき人気作品『進撃の巨人』の登場人物名も挙げてみました。こちらは、Johannes(ヨハネス)のフランス形であるJean(ジャン)、Markus(マルクス)のイタリア形であるMarco(マルコ)等、人物名は多文化的な印象を与えます。
主人公の名であるEren(エレン)はトルコ系ですが、エレン・デルディヨク(Eren Derdiyok)というトルコ系スイス人のサッカー選手がいるようで、そちらが由来でしょうか。
またこちらでも短縮形・愛称形の名を見ることが出来ます。Annie(アニー)はAnna(アンナ)、Connie(コニー)はCornelia(コルネリア)、Sascha(サシャ)はなんとAlexandra(アレクサンドラ)の、それぞれ愛称形です。
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