山本さんから何かアドバイスはありましたか?
小野>まずはテクニック的に危なかったので、細かくやり方やひとつひとつの振りの意味などを教えてもらいました。あとテクニックもそうですけど、山本さんは本当にパートナーを美しく見せる方なんですね。“パ・ド・ドゥと言えばーー”っていう感じで、パートナリングのズバ抜けた素晴らしさは誰もが知るところ。ですが、私は山本さんと組んで初めてアラベスクをしたとき、“あ、立てない!”って思ったんです。上手な方と組むと、普通はすごくラクだったり、私ひとりでも立てるようなバランスにもっていかれることが多いんですが……。山本さんの場合はそれよりひとつ前に押される感じ、もうひとつ大きく伸びやかなポーズをとらなければならない。ふたりで組むことによってさらに大きくキレイなポーズになる場所という、今までになかったラインを引き出してくれるんです。
だから最初は、“え、そこですか、立てません!”と思いました。私がそれまでやろうとしていたイメージは、パ・ド・ドゥじゃなくてデュエットだったんだと。ソロとソロが組み合わさっていただけだったんだということがわかりました。上手いってこういうことなんだなと、本当に驚きましたね。
新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』
2012年公演より 撮影:瀬戸秀美