ダンサーとして世界的評価を獲得
KARASのメンバーになって、数え切れない舞台に立ってきた。なかには転機となった作品もある。そのひとつが、2003年の『Bones in Pages』。もともと勅使川原氏がソロで踊っていた作品を、当時のメンバーだった宮田佳氏と佐東さんを加えて改訂した新バージョンだ。佐東さんは、覆面をした男でも女でもない存在という役所。
「それまでとは身体の使い方も全く違ったし、顔を隠すからなおさら自分という感覚で踊ってる感じじゃない。それに私の役は、勅使川原さんの分身的な立場。そういうこともあって、自分の身体や存在について新たに捉え直す機会になりました」
また2009年には、初のソロ作品『SHE -彼女-』を発表している。ソロデビューとしては、かなり遅い感があるがーー。
「そうなんですよね。ずっと“あなたもそろそろソロをやらないとね”って言われてたんですけど。私としてはもっと経験を積んでからだろうって思っていたし、そのときやっと機が熟したというか……」
ディレクションは勅使川原氏。雄大な自然の映像を背景に、ひとり踊る佐東さんのシルエットが美しく描かれる。
『SHEー彼女』(C)Sakae Oguma
数々の舞台を経験してきた佐東さんにとっても、初めてのソロはまた違うものがあったという。
「もともとあまり緊張はしない方なんですが、『SHE -彼女-』のときは冒頭で映像の中に自分が出て行くということに対してものすごく緊張して。いったん出たら、もう引っ込めない。どんな舞台でもそうですが、あのときは何故かそれを強く思ったんです。またあれ以降、そういう感覚を持つことが多くなりましたね」
『Scream & Whisper』(C)Bengt Wanselius
ダンサーとして国際的な評価も高く、これまで様々な賞を受賞している。2005年には、ローマで初演した『Scream and Whisper』でダンス雑誌「Ballet2000」の年間最優秀ダンサー賞を獲得。
さらに2012年には、第40回レオニード・マシーン賞を日本人として初めて受賞。これは過去にマーゴット・フォンティーン、ルドルフ・ヌレエフ、モーリス・ベジャール、アレッサンドラ・フェリも受賞したという栄誉ある賞だ。同年秋、イタリア・ポジターノでのガラ公演に出演している。
「昔レオニード・マシーンが所有していた島があって、その対岸に仮設ステージを建てて、浜辺でガラ公演を行いました。海風がビュービュー吹いてる中で踊って(笑)。でも、とても素敵な所でしたね」