演劇人が大活躍したドラマ
まずはやっぱりこの2本 『あまちゃん』&『半沢直樹』
2013年を代表するドラマと言ってまず挙がるのが『あまちゃん』と『半沢直樹』の2本。本筋のストーリーとは別に”分かる奴だけ分かればいい”の小ネタが随所に仕込まれた『あまちゃん』は、それまでNHKの朝の連続テレビ小説に興味がなかった層も引き込み社会現象に。”倍返しだ!”のキャッチーさと勧善懲悪の分かり易さがウケた『半沢直樹』はビジネスマンが熱くなれるドラマとして、関西での瞬間最高視聴率50.4%を記録しました。『あまちゃん』出演者における”演劇人濃度”は「大ヒット! あまちゃんと演劇人のアツ~い関係!」に書いた通りですが、『半沢直樹』も主演の堺雅人さんを始め、おネェモードの査察官・黒崎役の片岡愛之助さんや初のプチ悪役に挑んだ石丸幹二さん、今回はアノ怒鳴り声を封印した吉田鋼太郎さん、絶妙な小物振りを見せてくれた手塚とおるさん等、沢山の舞台出身・舞台に軸を置いた演劇人が活躍した事で、作品がより深くリアルに進化したように感じます。
”あまロス”の次は”和枝ロス”? 『ごちそうさん』 キムラ緑子さん
”あまロス”の次は”和枝ロス”?
9月に『あまちゃん』のオンエアが終了し、「あまちゃんがない毎日なんて耐えられない~」と、”あまロス”なる言葉まで巷で流行った10月。新しくスタートしたNHK朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』は、『純と愛』 『あまちゃん』と2作続いた現代ものから時代を明治~戦後の時代に戻し、『あまちゃん』のスピード感に付いていくのが大変だった層を見事に呼び戻して高視聴率を記録中。そしてその登場と共に凄いインパクトを見せつけてくれたのが、ヒロイン・め以子(杏)の嫁ぎ先の小姑・和枝を演じるキムラ緑子さんです。
関西で言うところの”いけず”で徹底的にめ以子をイビる和枝さん。当初は「やり過ぎ」「怖い」等の意見が多かった彼女も、ストーリーが進むにつれ「間違ったことは言ってない」「ある意味スカっとするいけずっぷり」と次第に和枝フリークを増やし、再び嫁いで西門家を後にする事になった際は「もう和枝さんが見られないなんて寂し過ぎる……」と沢山の”和枝ロス”視聴者を生み出す展開に。
最初は憎まれ役だったヒロインの小姑が、次第に視聴者に愛され、認められるというNHKの朝ドラでは珍しい素敵な事態を起こした和枝役のキムラ緑子さんは兵庫県出身の52歳。1984年に劇作家のマキノノゾミさんが主宰する劇団M.O.P.の旗揚げに参加し、劇団が解散する2010年まで看板女優として活躍。第32回紀伊国屋演劇賞個人賞、第12回読売演劇大賞優秀女優賞等、演劇界で権威ある賞も複数受賞しています。和枝が次第に視聴者に愛されるようになったのは、キムラさんのどこかカラっとした気持ちの良い演技が大きかったのではないでしょうか。
和枝の『ごちそうさん』一時退場後、注目を集めているめ以子の義妹・西門希子を演じる高畑充希さんは8代目の「ピーターパン」(歌が上手いのも当然!)、和枝と将来の約束をしたものの、実は結婚詐欺師だった安西役の古舘寛治さんは青年団の所属。(『リーガル・ハイ』では味のある弁護士役を好演)、他にも京都発祥の劇団・MONOの主宰・土田英生さんやmuro式のムロツヨシさん等、沢山の演劇人が『ごちそうさん』に参加しています。
アラサー女子が大共感! 『独身貴族』 平岩紙さん
後半に進むにつれて盛り上がった『独身貴族』
高級マンションに同居する兄弟……映画制作会社「キネマ・エトワール」の社長兼プロデューサーの兄・星野守(草なぎ剛)とその弟・進(伊藤英明)。そしてその2人と絡む新人脚本家の春野ゆき(北川景子)、更に守とお見合いをする大手映画配給会社社長の娘・現王園玲子(平岩紙)。通常、この関係で予測されるのはヒロインを取り合う兄弟とそれを邪魔するお嬢様のカタキ役……そんな構図かと思うのですが、中盤以降、ちょっと違う展開を見せた『独身貴族』。
4人の恋がこじれる辺りはこれまで放送されたあまたの恋愛ドラマとさほど違いはないものの、平岩紙さん演じる玲子さんのキャラクターが愛しい!可愛い!とアラサーからアラフォー女性の間で熱い支持を得たのです。
そんな玲子さんを演じる平岩紙さんは松尾スズキさん率いる人気劇団「大人計画」所属の女優さん。2000年の「キレイ ~神様と待ち合わせした女~」でデビューして以来、大人計画の本公演を始め、外部の舞台やプロデュース公演等、様々なジャンルの作品で活躍中です。(2013年には大泉洋さん主演の舞台『ドレッサー』で三谷幸喜さん演出作品にも初出演!)
舞台でもどこか不思議な存在感を醸し出している平岩さん。『独身貴族』の玲子さんも、ただ空気の読めないお嬢様なのかと思いきや、物語が進むにつれ彼女のピュアさやどこか悟ったモード、深い想いを秘めている姿が露わになり、「むしろ守は春野ゆきより玲子さんと一緒になって欲しい!」との書き込みがSNSや掲示板等で激増しました。
『ごちそうさん』和枝役のキムラ緑子さんも『独身貴族』玲子役の平岩紙さんも、舞台で培った確かな演技力とご本人のキャラクターが相まり、通常予測されるキャラクターとは一味違ったアプローチで役を演じた事が、特に女性視聴者のハートを掴んだ要因と言って良いのではないでしょうか。
■→ 次のページでは「伝説のパフェおやじ」にインタビューします!