世界遺産/ヨーロッパの世界遺産

メテオラ/ギリシア

大地から突き出す地上400mの奇岩群の頂に、宙に浮かぶ=メテオラの修道院群がたたずんでいる。修道士たちが神を見、命がけで造り上げたメテオラは、世界に35件しかない複合遺産のひとつとして世界遺産登録されている。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

奇岩群にたたずむ天空の修道院 メテオラ

大地から突き出した地上400mの奇岩の頂にたたずむ天空の修道院、メテオラ。修道士たちはこの奇岩群に神を見て、より神に近づくために、命をかけてこれら修道院を造り上げた。

今回は世界にたった35件しかない複合遺産(文化遺産と自然遺産、双方の価値を持つ世界遺産)のひとつ、ギリシアの世界遺産メテオラを紹介しよう。

複合遺産「メテオラ」の奇岩群

メテオラのランドマーク的な修道院、アギア・トリアダ。突き出した奇岩の上にあり、岩を落ちると数百メートル真っ逆さま

メテオラのランドマーク的な修道院、アギア・トリアダ。突き出した奇岩の上にあり、岩を落ちると数百メートル真っ逆さま

周囲を断崖絶壁に囲まれたヴァルラアム修道院

信じられない場所にたたずむヴァルラアム修道院。メタモルフォシス修道院から望む絶景

写真を見てひと目で惚れ込んでしまう土地がいくつかある。私にとってそのひとつがメテオラだった。

奇岩群といってすぐに思い浮かぶのが同じ複合遺産のカッパドキアだが、カッパドキアの奇岩群は高さ数mの岩々が無数に突き出しているのに対して、メテオラの奇岩は最大で高さ400mに及ぶほどで、とにかくでかい。山と呼びたくなるけれど、大地からほぼ垂直に突き出している様はやっぱり岩だ。そんな岩がニョキニョキとあっちこっちに出ている様は異様のひとこと。

宙に浮かぶ世界遺産といえばこれまた複合遺産のマチュピチュだけど、マチュピチュが標高2,000~4,000mに及ぶアンデス山中に隠されているのに対して、メテオラは四方の断崖絶壁によって周囲から隔絶されている。いまは橋や階段が整備されているが、かつては縄のハシゴを登ったり、巻きあげ機で引き上げてもらわないとたどりつけなかった。

 

メタモルフォシス修道院の手動ロープウェイ

メタモルフォシス修道院の手動ロープウェイ

ということは、最初の修道士はハシゴもなく、ロック・クライミングによってこの場所を発見し、修道院を建てたことになる。なぜ命をかけてまでそんなことをしたのだろう?

この岩の頂から見渡す大地や、鳥の声、風や空や流れ行く雲が、その秘密をそっと語りかけてくれる。
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