世界遺産/ヨーロッパの世界遺産

ストーンヘンジ:謎に包まれた巨石文明の遺産(3ページ目)

ただ石が並べられているだけなのに、緑の草原に描かれた神秘的で美しいサークルは中世の人々の心を打ち、魔女や巨人の伝説を生み出した。巨石は最大50トンにもなり、250キロメートルも離れた場所から持ち込まれたものもある。その目的とは? 今回はいまだ謎に包まれたイギリスの世界遺産「ストーンヘンジ、エーヴベリーと関連する遺跡群」の歴史や観光情報・遺跡に込められた人々の思いを紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

5000年以上前に遡るストーンヘンジの歴史

3つ石、トリリトン

「Π」の形をしている3つ石がトリリトン。これはもともとこの形で、5組が馬蹄型に並べられていた。現存するのは3組のみ

この地は少なくとも紀元前3000~前1500年頃まで約1500年間にわたって聖地として崇められ、時代時代にヘンジを築いていたようだ。この年代は現代に続くゲルマン人やノルマン人はもちろん、その前に住んでいたケルト人の時代よりさらに以前に遡る。

最初期は紀元前3100年前後に築かれた直径110メートルほどの土のヘンジ(ストーンヘンジ1)で、円形に土手を築き、その中でなんらかの儀式を行っていたらしい。紀元前3000年頃にはその内側に木製のヘンジ(ストーンヘンジ2)が築かれた痕跡があるが、詳しいことはわかっていない。

紀元前2600年前後にはさらに内側に約80個のブルー・ストーンが並べられ(ストーンヘンジ3-I)、紀元前2400年ほどまでにサーセン・ストーンによるサークル状のストーンヘンジが築かれた(ストーンヘンジ3-II)。トリリトンによる馬蹄型のヘンジ(ストーンヘンジ3-V)は紀元前2000~前1600年頃の比較的新しいものであるようだ。これ以外にもこの地では紀元前8000年前の柱跡や紀元前2600年頃の住居跡なども発見されている。
サーセン・ストーンとブルー・ストーン

手前に転がっているのがブルー・ストーン。サーセン・ストーンとブルー・ストーンは手で触れると表面温度が違うのがわかる

では、いったい誰が何の目的でストーンヘンジを建てたのか? なぜこの場所が選ばれて、円形や馬蹄型だったのか? どうして石を250キロメートルも運ぶ必要があり、またどうやって運搬したのか?

ヨーロッパの巨石文明は文字を持たないうえに、築いた人々はこうしたメガリスを放棄した後いっせいに姿を消してしまった。このためこれらの疑問には決定的な回答が出せず、推測するしかない。

ただ、太陽の運航と関係していることや、ストーンヘンジの形が自然界であまり見られるものではないことは確かだ。また、船とテコを使えばなんとか石を運べただろうことも確認されている。
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