VW(フォルクスワーゲン)/ゴルフ

パーフェクトな実用スポーツカー、ゴルフGTI(2ページ目)

“世界の大衆車“ゴルフの魅力を広げるスポーツグレードがGTI。すべてがゴルフGTIの文法に則ってきっちり仕立てられた内外装、進化の痕跡を大きく見つけることができた“中身”……。その走りは“ゴルフ果汁”を何倍にも濃縮したような、キレ味鋭い濃厚さがあります。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

“ゴルフ果汁”を濃縮したような、キレ味鋭い濃厚さ

VWゴルフGTI

デュアルクラッチトランスミッションの6速DSGを採用。アイドリングストップ機構や回生システムも備え、JC08モード燃費を15.9km/lとした

重箱の隅々をつつきまくっても苦情のカケラもでない、それはほとんどパーフェクトな実用スポーツカーだった。先にあえて難癖を付けておくとすれば、(あまりの楽しさに)気が急いてしまうため、発進時のシフトレバー操作と右足の動きがラフになりがちで、デュアルクラッチシステム特有の“鈍くささ”をおおらかに受け止める懐の深さをドライバーが失いがちになる、という点くらいのものだ。

マニュアル信仰世代にとっては、そこに電気機械仕掛けの限界を感じてしまうわけだけれども、それだって、乗り手の心の持ちようというもので、何とでも上手く凌げてしまうもの。機械との対話を楽しまなくちゃ! 何でもかんでもスムースにいったら、それはそれできっと、つまんなくなると思うよ、である。

上出来に過ぎるスタンダードモデルの走りを、さらに低く、さらにフラットに、さらにハードに、さらに弾性的に、さらにさらに速く……。全てのパフォーマンスが一糸乱れず調和し発揮されるあたりは、あくまでもゴルフの走りである。けれども、性能指標の環がグググっと押し広げられているから、ゴルフ果汁を何倍にも濃縮したような、キレ味鋭い濃厚さがあった。

最も気に入ったのは、ウデをやや上げながらハンドルを握り腰を深く落とした、スポーティで実はラクちんなドライビングポジションから得られるクルマとの絶大なる一体感である。これぞ、操縦だ。いやはや、踏んでも曲がっても、そして停まるときでも、こんなに気持ちよく過ごせるクルマなんて、そうはない。

高性能だけれども、すべてがドライバーの手の内にある感覚。持て余すということがない。これは、得難い特性である。

それでいて、実用面では、ゴルフのままだ。ゴルフであることを何ら犠牲にしていない。東京と京都の往復にも使ってみたけれど、高速燃費も、気にせず飛ばして14km/lオーバーと、十分満足のいく値であった。
VWゴルフGTI

専用チューンのスポーツサスペンションを装着。車高もベースより10mm低くなっている。進化した電子制御ディファレンシャルロック“XDS”を標準装備

実をいうと、ボクは、趣味と実用を分けて考えよう派である。趣味と実用をまぜて語るから、おかしなハナシになる、と常に思っている。安全と環境が最大の関心事である今は、なおさらだ。

けれども、ゴルフGTIのようなクルマに出会うと、その信念も揺るぎがちだ。趣味と実用は両立する、という、1つの解を具体的に提示されているわけなのだから……。
VWゴルフGTI

ステアリングを切るにつれ累進的なギア比となることで、ロックトゥロックが2.75回転から2.1回転へ。これにより従来より少ないステアリング操作で運転でき、キビキビしたレスポンスが得られるという

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