VW(フォルクスワーゲン)/ティグアン

VWのSUV・新型ティグアン、ボディ拡大で使い勝手は?

フォルクスワーゲンのコンパクトSUV「ティグアン」が2代目にスイッチした。新型ティグアンは日本ではコンパクトとは言いがたいサイズにまで拡大されているが、それにより得た恩恵と失ったものがあるか走りを交えてお届けしたい。

塚田 勝弘

執筆者:塚田 勝弘

車ガイド

より大きく存在感を増したフォルクスワーゲン・ティグアン

フォルクスワーゲン・ティグアン

新型フォルクスワーゲン・ティグアンは、全長4500×全幅1840-1860mm×全高1675mm。価格は360万~463万2000円


フォルクスワーゲンのSUVであるティグアンが2代目にスイッチした。新型ティグアンはコンパクトSUVを謳うものの、初代よりも全長が70mm、全幅が30~50mmワイドになり、ひと回り大きくなったのはひと目見るだけで十分に伝わってくる。

さらに、全高が35mm低くなり、先代よりもグラスエアリア(ボディを取り囲む窓)が先代よりも小さく感じるためか、重心が低くなったような気がする。直線を基調としたデザイン、先述したボディ拡大もあってワイド感が強調されている。

フォルクスワーゲン・ティグアン

新型フォルクスワーゲン・ティグアンは、1.4L TSIエンジンにFFのみの組み合わせ。JC08モード燃費は、先代の14.6km/Lから16.3km/Lまで拡大している


まず、日本に導入されたのはFFのみで、エンジンは1.4Lの直列4気筒ターボの「TSI」と湿式6速DSGの組み合わせ。4WDの4モーションはいずれ導入されるかもしれないが、ティグアンを買うユーザーの多くはFFで十分という人が多そうだし、最低地上高は170mmから180mmに高くなり、雪上などを中心とした一般道を走る分には十分なはずだ。

ボディサイズ拡大の長短は?

新型フォルクスワーゲン・ティグアン

先代よりもワイド感のあるインパネは着実に質感を向上。「Highline」以上ならインターネット接続によりナビ機能などを高めたテレマティクス機能も搭載。メーターをディスプレイ化したアクティブインフォディスプレイも「Highline」以上に標準装備している


サイズの拡大は見た目が立派になっただけでなく、居住性や積載性の向上にもちろん寄与している。室内長は26mm延長され、後席ニールームは29mmと明らかに広くなった。しかも後席は180mmの前後スライドが可能になり、荷物が増えても対応しやすくなったのも朗報。

35mm低くなったことで気になるのは、後席のヘッドクリアランスだろう。しかし、身長171cmの筆者でも10cm以上の余裕が残るから大人4人のドライブも快適に過ごせるはずだし、先代の470L-1510Lから615L-1655Lに大幅に拡大した荷室により多彩なニーズに応えてくれるはず。

新型フォルクスワーゲン・ティグアン

後席の足元空間が格段に向上。背もたれの天地高はこのクラスの欧州SUVとしてはやや短め


一方でサイズアップに関しては、欧州では初代ティグアンよりも10cm大きな新型が望まれていたそうだが、日本では諸手を挙げて歓迎とはいえない。先代ティグアンなら何とか収まっていたガレージに新型ティグアンは入らなくなるケースも出てきそうだ。

新型フォルクスワーゲン・ティグアン

先代ティグアンではやや狭く感じられたが、ひとまわり以上多くなった感のある荷室。後席はシングルフォールドダウン式


ただし、最小回転半径は先代の5.7mから新型は5.4mにまで小さくなっていて、直線を基調としたボディデザイン、比較的Aピラーやウインドウが立ち気味なのですっきりとした視界が得られるのは新型ティグアンの美点。

さらに、大きくなったボディサイズの割に取り回しには(それほど狭い道を運転したわけではないが)視界が良好であるためそれほど苦労することはなかった。駐車場事情など、物理的な拡大を歓迎できないのならコンセプトカー「T-クロス」の市販仕様を待つ手もあるかもしれない。

ゴルフなどと同様に「MQB」を初採用

新型フォルクスワーゲン・ティグアン

こちらはHighline。先代ティグアンの最終モデルよりも10psダウンしたものの、最大トルクの向上などにより動力性能に不満は抱かせない


新型ティグアンは、SUVとしては初めて生産モジュールの「MQB」を採用している。走り出すとサイズアップの割に重さをあまり感じさせないのは、ホワイトボディ単体で先代よりも12kgの軽量化が果たされているのと、VWらしいしっかり感のあるボディ剛性感が得られるから。フォルクスワーゲンによると、SUVの泣き所であるリヤゲートまわりの剛性向上(ねじり剛性で7%向上)など、堅牢なボディ構造を得たとしている。

気筒休止システムを備える1.4Lのシングルターボ式TSIエンジンは、150ps/5000-6000rpm、250Nm/1500-3500rpmというスペック。先代よりも最大トルクを10Nm増強し、先代の1500-4000rpmから発生回転数を下げたことで発進時から中速域までの力感が増している。しかも、ボディが大きくなっても「MQB」の採用で車両重量は先代と同等だから排気量以上に力強さがあるという美点はさらに磨かれている印象を受けた。

少し気になるのは乗り心地だ。235/55R18サイズを履くTSI Highlineと、255/45R19のTSI R-Lineを乗り比べることができたが、後者はバネ下が重いせいかゴツゴツした乗り心地は、街中から首都高速まで大きく変わらなかった。ドライビングプロファイル機能で「コンフォート」にしても総じてこうした乗り味で、快適性とのバランスを重視するならTSI Highlineがベターだ。

なお、エントリーグレードのTSI Comfortlineの試乗車はなかったが、215/65 R17タイヤを履く同グレードの走りも気になるところ。素のグレードといえば、パサートのエントリーグレードを試乗する機会がかつてあり、その際に良好なバランスを確認できたということもあるし、フォルクスワーゲンの場合、エントリーグレードでも走りでがっかりさせられることが少ない気がするからだ。

価格と総合力の高さが際立つ新型ティグアン

新型フォルクスワーゲン・ティグアン

手持ちのスマホなどを使うことでネットにつながり、スポット検索などが充実したのも新型ティグアンの魅力のひとつだ


そうした点からもまずは、実用性とリーズナブル(適正)な価格設定というフォルクスワーゲンらしく360万円というComfortlineに惹かれる人もいるだろう。ただしその際は、レーンキープ機能や渋滞時追従支援システム、ナビなどがオプションになるので必要な装備の見極めもより大切になる。

その先進安全装備系では、ACC(全車速追従機能)やレーンキープに関しては十分に納得できる仕上がりで精度も高い。また、「つながるSUV」を標榜するコネクティビティに関しては、操作に若干の慣れを擁するものの、初めてでも直感的な操作ができる仕上がりになっている。

Cセグメント系SUVの競争激化は、初代ティグアン登場時と様変わりしている。輸入車だけでなく国産SUVとも競合しそうな新型ティグアン。信頼できる走りと居住性、実用性を増したキャビン、荷室、そして最新の安全装備の数々(Highline以上に標準装備が多い)を含めた総合力が大きな武器。いずれ4モーションやディーゼルであるTDIも導入されれば、一挙にセグメントリーダーになり得る素材だ。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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