行政書士試験/行政書士のキャリア・開業

資格取得後の独立体験記 第17回「大学院への道」(2ページ目)

協議離婚書作成業務で苦悩した私は、解決の道を模索し始めます。行政書士には様々な制限があり、弁護士のようにはいきません。しかし、文献を読んでいるうちにある制度に行きつきます。そこで、一大決心をすることになります。

山本 直哉

執筆者:山本 直哉

行政書士ガイド


諦めきれない「夫婦財産契約」

夫婦財産契約が日本人には向いていないことは理解したものの、夫婦財産契約についてもっと調べてみたいという意欲は高まるばかりでした。協議離婚のあの不合理を回避する方法は、夫婦財産契約以外にないからです。

大学院への道

私は大学院での研究の道を選択することを決めました。しかし、当時、私は30歳を過ぎていました。子供は2歳、共働き夫婦として初めての子育てに一喜一憂していました。昼間は事務所、夜間・休日は講師業です。無謀な話です。当然、妻もいい顔をしませんでした。

しかし、離婚実務という鬱屈とする日々に終止符を打ちたいという気持ち、そして、どこか大学という清流に身を置きたいという現実逃避の気持ち、夫婦財産契約という新規業務を立ち上げたいという現実的な気持ち。これらが重なって大学院への思いは強まるばかりでした。

まず、大学院選びです。順当に考えれば、母校中央大学の大学院を選ぶべきなのでしょう。しかし、私立で学費が高いこと、付属高校、大学、大学の学内講座担当(生協主催)ということで10年近く中大に関係してきたので、他の大学院を選ぶことにしました。

そこで眼をつけたのが一橋大学でした。事務所から徒歩20分という最高の立地で、国立大学で学費も安いのです。教授の顔ぶれをみても、国内最高峰の研究機関であることは間違いありません。さらに言えば、一橋大学大学院には社会人枠があり、英語の受験がなく、研究計画書と口述審査が試験科目でした。一橋大学大学院しかないと決意をしました。

気持ちだけの願書

ただ、そのころ私は体調を崩していました。1か月で3回も風邪をひき、微熱が続き、通院を続けていました。薬と栄養ドリンク漬けで、ひどい状態でした。しかも、仕事が忙しくて、研究計画書はほとんど書けない状態でした。

一橋大学の願書は消印有効ではなく必着だったのです。締切は、翌日配達の集配リミットである立川郵便局本局午後7時。その日私は、朝から午後6時まで中大で授業をしていましたが、休み時間に物凄い勢いで願書を記入し、授業が終わると走ってモノレールに乗りました。リミット10分前に立川郵便局に着き、机で書類の訂正を行い、集配時刻の5分前にぎりぎり提出できたのです。

妻に願書を無事提出できたと電話をすると、本当に驚いていました。当然でしょう、前日の深夜、そして当日早朝の時間を使って、8000字の研究計画を書き上げたようなものだったのですから。

その思いが伝わったのでしょうか、結果は合格。こうして私の社会人大学院生の生活が始まりました。
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