委任状とは?そもそもの意味と役割
そもそも委任状の「委任」とはどういうものなのでしょうか。民法によれば、「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託」することとされています。簡単に言えば、委任とは「他人に仕事を任せる」契約のことです。そして、委任契約は合意のみで成立しますが、委任契約を証するために作成するのが委任状です。
この委任状が必要となるのは、たとえば、夫が妻に「会社から住民票が必要と言われたんだけど、代わりにとってきて欲しい」などといった場面です。
このように本人が自分で証明書をとらずに、他人にとってきてもらう場合には委任状が必要となるのです。
なお、委任と紛らわしい制度に代理があります。この二つの制度は、法律上異なりますが、実社会においては区別されていません。
たとえば、「代理人の方は委任状が必要です」という文面をご覧になったこともあるかと思います。「委任」と「代理」は同じ意味と考えて頂ければ十分です。
そこで、
- 1)委任した人を委任者
- 2)委任された人を受任者
- 3)代理権を与える人を本人
- 4)代理権を与えられた人を代理人
1)委任者=3)本人、2)受任者=4)代理人
と考えてください。
委任状の作り方・書き方
では委任状はどうつくればいいのでしょうか。民法には委任状の作り方の規定はありませんから「自由」です。ですから、インターネット上の委任状のひな形には、様々なパターンがあります。だからこそ、皆さん迷ってしまいます。

委任状は、A4縦・横書き・1枚が一般的です。
そこで、委任状として「最低限これだけは書かなければならない」ことについてご紹介します。
- ア、委任状の記載(題名)
- イ、委任者(仕事を頼んだ人の住所・氏名)
- ウ、受任者(仕事を頼まれた人の住所・氏名)
- エ、委任事項(頼んだ仕事の内容)
- オ、年月日(委任契約を結んだ日)
そして、委任者の署名捺印もしくは記名捺印が必要です。
ア、委任状の記載(題名)
通常は、本文の前に、本文より大きい文字(例えば、本文12ドット、題字20ドットなど)で記載します。単に「委任状」とするのが慣行です。
イ、委任者(仕事を頼んだ人の住所・氏名)
委任者は、署名押印もしくは記名押印をするため、本文の最後に記すのが一般的です。委任者の表記は、「人物の特定」が必要です。
そこで、同姓同名の他人と区別するため、氏名だけでなく住所も記載します。人物が特定されればよいので、「通称名」や「婚姻前の氏」でも理論上問題ありませんが、紛争を予防するため、公的書類に記載される氏名の使用をお勧めします。どうしてもという方は、「通称名こと氏名」のように添書きをしておけばよいでしょう。外国人の場合も、パスポートなどの公的書類の記載通りにしましょう。
住所も免許証や保険証などに記載のある住所を正確に記載してください。なお、押印する印鑑は三文判で構いませんが、委任内容により実印が必要となることもあります。
ウ、受任者(仕事を頼まれた人の住所・氏名)
受任者は、本文の冒頭あたりに記すのが一般的です。受任者も人物特定の必要性から住所・氏名を記載します。この場合も免許証などの記載通りに書いた方が無難です。代理人の本人確認をするのは公的証明書ですから、受任者の氏名を通称名で記載すると、委任状の人物と目の前にいる人物が同一なのかどうかの確認ができません。
エ、委任事項
委任事項は、本文にあたる部分です。「私は、代理人○○に下記事項を委任します。」とした上で、委任事項の上部に「記」、下部に「以上」をつけて、委任事項が後から書き加えられないようにするのが一般的です。
オ、年月日
委任状を作成した日付を書きます。なお、法律の世界では和暦を使用するのが一般的ですが、西暦ではダメということではありません。
次のページでは、委任状のトラブルと対処法をご紹介します。