キャリアプラン

働くということ 実社会との出会い

数々の文学賞を取られ、昨年まで芥川賞の選考委員であった黒井千次さんの自伝的な本です。専業作家になられる前の会社員時代に試行錯誤された経験から、仕事とは、働くとは、どういうことかを考え、意味づけられた本です。

藤田 聰

執筆者:藤田 聰

キャリアプラン・リーダーシップガイド

今回は、黒井千次さんの著作である『働くということ-実社会との出会い』を紹介します。この本は出版されてから30年以上経過しておりますが、隠れたロングセラーです。偶々、知り合いの方から薦められ、手に取った本です。「仕事とは、働くとは、どういうことか」を考え、自分の中での意味づけを行うのに相応しい本です。

働くとは自分自身と向き合うことです。

働くとは自分自身と向き合うことです。

出版されたのは30年以上前(1982年の春)ですが、本質的なことが書かれていますので、若い方でも十分理解でき、納得できる内容です。5年ほど前に、大学のゼミ合宿で読んだ記憶がありますが、時代背景は違えど、当時の教え子も違和感なく読んでおりました。

仕事に自分を合わせるか、自分に仕事を合わせるか?

仕事に自分を合わせるか、自分に仕事を合わせるか。これは社会人にとって永遠のテーマかもしれません。ガイドの私も新入社員の頃から試行錯誤をしたものでした。当時の上司は極めて扱いづらい思いをしたことでしょう(笑)

入社前のイメージと入社後のイメージとのギャップが大きければ大きいほど、このテーマにぶつかることでしょう。

このギャップへの折り合いをつけられるかどうかが、長く勤めあげられるかどうかの分岐点です。会社への期待、上司への期待が大きかったガイドは折り合いをつける、良い意味で割り切るのに数年が掛かりました。

折り合いがつかない場合、ストレスにもなり、モチベーションが高く保てない状態が続きます。当然の事ながら、あまり高い成果を期待することはできません。

特に、新卒や中途を問わず、新しい仕事に就く際は、頭や心を空っぽにして、謙虚に素直にインプットしていくことが重要です。中途半端な知識は捨てて、仕事そのものに自分を合わせることが特に最初の3年間は必要でしょう。

石の上にも3年、ある程度の型が出来れば、次のステージとして、自分なりのスタイルを確立していけます。守・破・離(シュバリ)という武道などでよく聞かれる言葉に集約できるでしょう。

仕事を通じて、もがき苦しむことは未来への財産となるはずです。仕事と自分とが一体化、シンクロナイズすることが理想と言えましょう。このような領域に到達するまではステップバイステップで道を究めることです。諦めず続けることしか道はありません。

自律的な組織が求められる今日では、「会社や仕事に期待する」ではなく、「自分に期待する」ことがより相応しい心構えとなるでしょう。同じ「ギャップ」を感じるでも、「自分と会社・仕事のギャップ」と「自分の描く未来と現実のギャップ」とでは大きく意識も行動も違ってきます。
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