特に「色」に注目します。
紳士靴そのもの以上に、ここ数年で大分様変わりしたなーと感じるのが、乳化性の靴クリームの世界です。以前に比べ選択肢の幅が大幅に広がり、また価格に関しても一瓶で2千円以上するものが結構増えて来ました。この動き、直近はともかくとして、長引いていた不況の影響で靴本体を購入する頻度は以前より衰えてしまったものの、その分1足を履く頻度が高まり、だったらせめてお手入れ位は今まで以上にしっかりやらないと…… 的な時流を受けたものなのかもしれませんね。ありがたいことにこの潮流の結果、香りや浸透性など各商品の個性がこれまでより際立つようになっています。中でもとりわけ商品ごとに微妙に、でも決定的に異なるのが色付きのものの「色」の出方です。全く同量を用いても、あるものでは透明感が出る一方で別のものでは上から覆う感じに仕上がる…… 含有されている油分と蝋分それに水分のバランスや、染料・顔料の構成比の違いで、革に入れるとその違いが如実に出て、靴の表情も結構変化するのです。
そこで今回から暫く、読者の皆さんのご選択の参考とすべく、代表的な靴クリームがどんな「色」なのかを追って行きたいと思います。表現に公正を期したいので、実際の色合いは革ではなく白い紙、しかも色感の微妙な違いがダイレクトに表れ、塗った周囲や裏面に滲み難いことで多くの画家さんから長年評価を得る中性紙「マルマンの厚口画用紙」を用いて比較します。また色を塗る際は綿棒で圧力を強く掛けずに用いて、その時の伸びや摩擦感、それに浸透性や光沢の度合いについても付記してまいりましょう。それではまず、皆さんが一番使う色、「黒」から見て行きましょうか!
次のページでは基準となるものから追ってみましょう。となると、まずは、やっぱりアレだな!