上海発、安くて美味しい麺専門店の「上」で見つけた!江南料理店
蘇州シルクの織物が飾られた3階の個室。1階2階の喧騒とは別世界。
「上海八万人体育場」という大きなスタジアムの敷地内に建つホテルの一角に、お昼前から連日混雑しているお店があります。その名も『鴻瑞興』。安くておいしい麺のお店として有名です。ここの麺は蘇州麺と呼ばれるタイプのストレートの細麺。いわゆる「中華そば」のイメージに近い味わいです。このお店、麺の専門店として紹介されることが多く、上の階がレストランフロアになっていることはあまり知られていないのですが、2階と3階は本格的な江南料理を味わえるレストランなのです(江南とは上海や蘇州、杭州などを含む長江下流より南のエリアのことを指します)。
1階の看板メニュー「●(火へんに悶)肉麺」。おすすめです。
レストランフロアのうち、注目してほしいのが、個室をメインにしたつくりになっている3階。皇帝を描いた絵画やシルクの織物などが飾られており、1階2階のカジュアルな雰囲気とは異なります。というのも、実はこのお店のオーナーである是亮氏は、清時代に活躍した満族の貴族の末裔なんです。「是」という苗字も中国では珍しいそう。蘇州や杭州など江南地方の料理が好きなあまり、このお店を開いたのだとか。是氏自ら3階で接客することもあります。
有名人もハマる江南地方の味
上海にはマコモダケを使った料理が豊富。18元と格安の一品。
売り切れのことも多い「菱角米」。菱の実、食べたことありますか?
料理は伝統的な江南料理を軸に“海派料理”と呼ばれるモダン上海料理の要素もミックス。素材の持ち味をいかした品のある料理を楽しめます。
私のおすすめは「蝦△(米へんに子)□(草かんむりに交)白」。マコモダケにエビの卵をまぶした前菜で、塩気が絶妙、これはお酒がすすむ! 紹興酒はもちろん、日本酒にもあいそうです。それから「菱角米」という菱の実を使った一品もぜひ。ほくっとした食感と、しみじみとした味わいが印象的です。料理長を務める梁鴻彪氏は、実力派シェフとして上海では有名。江南の名物であるエビや蟹を使った料理もすばらしいものがあります。
3階では残念ながら1階で出している麺は食べられません。あるのは具ナシの「陽春麺」。これはこれでシンプルでおいしいのですが、オーソドックスな中華そばで締めたいという人は早めに訪れて最後に1階に寄りたいところですね(麺フロアは20時半にクローズ)。
3階は食器も華やか。
ガイドブックに紹介されているのはたいてい1階のみなので、レストランフロアに観光客はほとんどいません。でも実は、3階にはジャッキー・チェンやアンディ・ラウなど香港の映画スターをはじめ、有名人もたくさん訪れているんです。その上、値段もリーズナブル! 中国のレストランでは多くの場合、個室を利用する際にオーダーしなくてはいけない「最低消費額」が設定されているのですが、ここは特に設けておらず、一人4元の席料がかかるのみ。ただしランチもディナーも混んでいるので予約は必須です。
スタジアムの敷地内、安い麺のフロアの上という思わぬところに名店があるのが、上海の面白さだと思います。
夜には華やかなネオンが灯ります。
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■鴻瑞興(Hong Rui Xing Restaurant)
住所:中山南二路1500号(上海東亜体育賓館1~3F)
TEL:021-6427-5177
営業時間:11:00~21:00 ※1階は6:30~20:30
アクセス:地下鉄1、4号線「上海体育館」駅より 徒歩5分