1989年、『セックスと嘘とビデオテープ』でカンヌ国際映画祭パルムドールを史上最年少の26歳で受賞し、一躍有名になったスティーヴン・ソダーバーグ監督。2000年には『トラフィック』でアカデミー監督賞を受賞し、その後も『オーシャンズ』シリーズをヒットさせ、最近ではチャニング・テイタム主演の『マジック・マイク』で世の女性やゲイたちをメロメロにした方です。
そんなソダーバーグ監督が、マイケル・ダグラスとマット・デイモンを主演に迎え、ゲイのエンターテイナー・リベラーチェの伝記映画を撮るという企画が発表されたのは、2008年でした。が、内容が「ゲイ過ぎる」という理由でスポンサーがつかず、製作が難航します。結局、劇場公開作品ではなく、HBO制作のTV映画として製作されることになりますが、2010年になって主演のマイケル・ダグラスに末期の咽頭がんが見つかり、がんが治るのを待って、ようやくクランクインとなったのでした。
監督はこの作品を撮ったら引退すると宣言しており、そのぶん魂の込められた傑作となりました。(実際はもう1本、『サイド・エフェクト』が製作されましたが、そちらの方が先に公開されたので、日本でソダーバーグ作品の見納めとなるのは、今回の『恋するリベラーチェ』です)
そのように、本当に苦労して製作された『恋するリベラーチェ(原題:BEHIND THE CANDELABRA)』は、今年のカンヌ国際映画祭のコンペに登場し、世界的に注目を集めます。(苦労が報われて本当によかったですね)
そして、今年のエミー賞(TV界のアカデミー賞)を席巻することとなりました。まず、7月にノミネートが発表され、ミニシリーズ/テレビムービー部門で作品賞ほか合計14部門で15ノミネートという『タイタニック』並みの快挙を成し遂げます。そして9月の授賞式では、監督賞(スティーヴン・ソダーバーグ)、主演男優賞(マイケル・ダグラス)ほか、最多11部門を受賞するという栄誉に輝きます。
9月23日(現地時間)に行われたエミー賞授賞式は、『恋するリベラーチェ』に出演したマイケル・ダグラスとマット・デイモンがプレゼンターを務め、リベラーチェへのトリビュートとしてエルトン・ジョンがライブパフォーマンスを行うなど、『恋するリベラーチェ』一色となり、大盛況の内に終了しました。授賞式でマイケル・ダグラスは、恋人役のマット・デイモンにキスを贈り、「(この作品の演技は)パートナーに依存しなければならなかったわけだけど、あなたは素晴らしかった。だから、この受賞の半分は君のものだ」とスピーチし、会場から盛大な拍手が送られました。
アメリカのTV映画が日本でロードショー公開されることは極めて異例なことだと思いますが、そうやって世界的に話題になり、栄えある賞にも恵まれたおかげで、ぼくらも観ることができるようになりました(本当によかった!)。11月1日から公開が始まっています。今回はこの『恋するリベラーチェ』の見どころを徹底的に解説いたします。
『恋するリベラーチェ』
2013年/アメリカ/監督:スティーヴン・ソダーバーグ/出演:マイケル・ダグラス、マット・デイモンほか/配給:東北新社/新宿ピカデリーほかでロードショー公開中