既存住宅売買瑕疵保険は改善の途中?
消費者の安心感を高め、中古住宅流通の促進を図ることを目的として導入された既存住宅売買瑕疵保険ですが、その累計申込み件数は2013年6月時点で「宅建業者販売タイプ」が8千件あまり、「個人間売買タイプ」が2千件弱にとどまっています。大半の中古住宅は売主が個人であることを考えると、「個人間売買タイプ」がほとんど活用されていない状況だといえるでしょう。床面積や構造などによって異なりますが、一般的な一戸建て住宅で8万円~10万円程度かかるとされる保険料と現場検査手数料を、誰がどう負担するのかといった問題もありそうです。そのため、保険の制度設計そのものが順次、見直されている状況です。まず、中古マンションでは当初、1戸だけの保険加入でも共用部分全体と専有部分の検査を求められたため費用がたいへん高額となり、現実的に保険を利用することができませんでした。そこで、新築時に建設住宅性能評価を受けているなど一定の要件を満たすマンションについては、共用部分の検査を簡略化することで必要な費用を抑えた保険が平成24年6月に認可されています。
また、「個人間売買タイプ」では従来、保険法人と検査機関による2回の現場検査が必要となっていましたが、今年(平成25年)11月から全国で実施される「既存住宅インスペクション講習」を修了した者による検査を経た場合には1回で済むように簡略化されます。これは平成26年1月から適用されますが、簡略化によって検査料の低減も見込まれています。
さらに、「宅建業者販売タイプ」「個人間売買タイプ」とも、従来は保証期間が住宅の引き渡しから5年間、保証金額の上限が1,000万円となっていましたが、「宅建業者販売タイプ」では保証期間を2年、保証上限額を500万円とする商品が認可されました。同時に、保証期間を2年、保証上限額を1,000万円とするタイプも認められています。今年(平成25年)8月1日から一部の保険法人で取り扱いがスタートしました。
一方、「個人間売買タイプ」では、保証期間を1年とし、保証上限額を500万円と1,000万円から選択できる新商品の取り扱いが今年(平成25年)10月15日からスタートしました。この保険では、引き渡し前に実施するリフォーム工事も保証対象にすることができるようになっています。
既存住宅売買瑕疵保険の買主へのメリットのひとつである保証期間の長さを短縮することについて異論もあるようですが、普及の裾野を広げるためには必要な措置でしょう。これからも商品内容の改定が行なわれることがあるでしょうから、この保険を利用するときには最新の情報を確認することも欠かせません。
既存住宅売買瑕疵保険に代わる民間の取り組みも
既存住宅売買瑕疵保険とは別に、中古住宅流通大手では独自の保証制度を取り入れるケースが相次いでいます。平成24年10月に東急リバブルが「リバブルあんしん仲介保証」をスタートさせたのを皮切りに、大半の大手不動産会社がこれに追随しました。その多くは保証期間が1年、保証上限額が250万円程度となっていますが、対象とする中古住宅の範囲の限定など、会社によって大きく異なる部分もあるので注意が必要です。検査などにかかる費用はすべて無料としていますが、仲介業者が保証をする以上、「規定の仲介手数料を支払うこと」が要件となっているのは仕方ありません。一方、中小の仲介業者では大手のように自社保証をすることが困難なため、一部では既存住宅売買瑕疵保険の費用を仲介業者が負担することで顧客へのサービスにつなげる事例があったものの、その広がりには欠けていました。そこで、不動産ポータルサイト「HOME’S」を運営するネクストが今年(平成25年)9月2日から提供を始めたのが「HOME’S住みかえ保証」です。これは会員の仲介業者が、ネクストを窓口として保証会社の検査・保証を受けられるようにするもので、保証期間は最大1年間、保証上限額は250万円(うち、一戸建て住宅のシロアリ被害が50万円)となっています。中小の仲介業者でも大手業者なみの保証ができるようになり、今後はこの保証を利用する事例が増えていくだろうと考えられます。
既存住宅売買瑕疵保険と仲介業者による保証制度とが併存し、消費者にとってやや分かりづらい状況かもしれませんが、両者の違いを知ってうまく活用していくことが大切です。
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