文化遺産が11! ベルギーの世界遺産
ユネスコの世界遺産に、日本人ほど注目している国民はいないとよく言われます。確かに、ベルギー人は、UNESCO認定の世界遺産かどうかには全く無頓着で、純粋に、自分たちの文化遺産をとても誇りにし、「文化遺産の日」などが設定されていて、人々はまめに足を運び、理解や保存に努めています。世界遺産かどうかを重視する人は多くても、その歴史やカテゴリーを知っている人はあまり多くないのでは? そもそも、UNESCOの正式名称が、「国連教育科学文化機関」で、本部がパリにあることはご存知でしょうか。世界遺産は、1972年、世界の文化と自然の遺産を守ることを目的とした国連憲章で作られたもので、文化遺産と自然遺産のカテゴリーがあるわけです。美しい海や山脈に恵まれた日本では、2013年現在17件中4件が、知床、小笠原諸島など自然遺産なのです。
バラエティに富んだ海岸線も、高い山脈もないベルギーには自然遺産はゼロ。11件全てが、歴史の中で生み出してきた文化遺産で、歴史的な建造物や産業遺産が多いのが特徴です。また、ベルギーという国(1831年建国)ができるずっと前の遺産が多いので、ベギン会院や鐘楼などは、広い地域に散らばっていたり、今日の国境を越えて集合体として登録されていたりするのです。
個々の世界遺産については、世界遺産担当の長谷川大氏の「ヨーロッパの世界遺産:ベルギー」記事にも詳細されているので、まず、日本人にとっての観光的興味という視点から分類して、その上で、訪ねやすいように地域別にまとめて、解説することにします。
長谷川氏のヨーロッパの世界遺産ベルギー記事はこちらから
ブリュッセルのグランプラス、ブルージュの歴史地区
■歴史的で美しく、観光という観点から興味深いもの
- ブリュッセル旧市街中心部の『グランプラス』(1998年)
- ブルージュ旧市街の歴史地区(2000年)
- フランドル地方(ベルギー北部欄語圏)に残るベギン会院の数々(1998年)
- ベルギーとフランスに残る鐘楼の数々(1999年、2005年)
- トゥルネー『ノートルダム大聖堂』(2000年)
- 建築家ヴィクトール・オルタによる主要なアールヌーヴォ建築様式による邸宅の数々(ブリュッセル、2000年) 注:写真は、オルタによる作品ですが、漫画博物館となっているもので、世界遺産登録されている個人邸宅群ではありません。
- ストックレ邸(ブリュッセル、2009年)
- 中央運河にかかる4基の水力式リフトとその周辺のラ・ルヴィエールおよびル・ルー(エノー州、1998年))
- プランタン・モレトゥスの家屋・工房・博物館複合体(2005年)
- スピエンヌ『新石器時代の火打石の鉱山発掘地』(モンス、2000年)
- ワロン地方(ベルギー南部フランス語圏)にある主要な鉱山遺跡の数々(2012年)
詳細記事はこちらから>>>ブリュッセル周辺の世界遺産、ブルージュとフランダース地方の世界遺産、トゥルネーとワロン地方の世界遺産
ところで、ユネスコの世界遺産には、絶滅や消失の危機にさらされている古代都市の遺跡や動植物の保護地区などの「危機に瀕する遺産」という特別の認定があり、アフリカ、南米、中東諸国などに多く見られますが、日本にも、ベルギーにも、これに該当するものはありません。
また、人類の負の遺産ともいうべきものも登録されていることにお気づきでしょうか。たとえば、ナチスのホロスコーストの代表地としての「アウシュビッツ」などです。こうした「世界の人類が忘れてはならない遺跡」のひとつとして、ヒロシマやナガサキなども加えられてしかるべきなのかと考えてしまいます。