東京国立博物館・特別展連動企画『洛中洛外図3Dプロジェクションマッピング』の表現
クリエイターの村松亮太郎氏
「建物に派手な色が使われていないので条件は良かったです。重要文化財の世界観をストーリーにどう表すか、洛中洛外図屏風の絵に描かれていない部分をプロジェクションマッピングならではの表現である3Dでどう表すかを考えました」と村松氏はインタビューで語りました。
洛中洛外図屏風 舟木本(岩佐又兵衛筆 江戸時代・17世紀)に描かれているのは総勢2728人。笑って、踊って、けんかして、恋に生きる京の都の人生のひとこまを垣間見ることができます。
寺の境内で女?男?に抱きつくお坊さん、四条河原の歌舞伎、伝説の戻り橋、遊女のお色気入浴シーン、三十三間堂の通し矢、祇園会の行列、魚をさばく二条城の台所、花見帰りの酔っ払いなど京都の人々のさまざまなシーンが描かれています。
プロジェクションマッピングでは、東洋館の幅約80メートルの外壁に約8分半、3D映像で京都の魅力的な人々が蘇りました。
「こぜりあい、ナンパなどあの時代に生きていた当時の人々のディテイルを表現しました」と村松氏。
熱気に溢れた京都の人々が魅力的に表現される
≪洛中洛外図屏風 舟木本とは≫
日本テレビ開局60年 特別展「京都―洛中洛外図と障壁画の美」 展覧会の見どころよりこの屏風は滋賀県の医師・舟木氏がもとの所蔵者であったため、舟木本の名で知られています。左右の屏風を並べると7mほどの画面幅に、南からみた京都の景観を、東から西へ連続的に展開させ、鴨川の流れが左右の画面をつなぎます。右端には、豊臣秀吉が建てた方広寺大仏殿の偉容を大きく描き、左端には徳川家康が建造した二条城を置いて対峙させています。
左隻・2扇の三条大橋と高瀬川に架かる小橋が続くあたりには、祇園祭の風流が行きかいます。その先には南蛮人の姿もみえ、店先での商いや、街路をゆく芸能者などが通りをうめています。画面下方、東寺の堂内では僧たちが読経していますが、隅で若い人を抱きしめる僧の姿もみえます。
舟木本は、建物や人々をクローズアップして取り上げていることが特色です。
屏風絵では、向かって右側の屏風を右隻、左側の屏風を左隻と呼びます。日本画の屏風では、季節の移り変わりを右隻と左隻の視点の移動で表現されることが多いようです。左右に視線を動かすことで絵に変化をつけ、鑑賞者が楽しめるようにと工夫されているのです。
屏風絵の作者がつけた変化は、村松氏によって3Dのプロジェクションマッピングとして躍動的な動きを伴って現代に生まれ変わりました。
立体的に見せるために意識したのはスクリーンという概念からの解放。つまり、観客にフレームを感じさせないことが重要なのだそう。実際の造形を生かしたり、あるいは柱をあえて消してみたり、壁の1部分だけに投影するなどの演出をされています。
3Dの立体感に圧倒される
今回、村松氏に教えていただいた『3Dプロジェクションマッピング』特有の表現は、今後、私たちが『3Dプロジェクションマッピング』を観覧する際の参考になりますね。ウインターシーズンは、クリスマスイルミネーションと合わせて開催されるプロジェクションマッピングを目にする機会が増えると思います。
次のページでも、『洛中洛外図3Dプロジェクションマッピング』のストーリーをお届けします。