石丸幹二 愛媛県出身。90年『オペラ座の怪人』でデビュー。劇団四季の看板俳優として活躍後、退団。『兵士の物語』『シークレット・ガーデン』『パレード』『ジキル&ハイド』等の舞台、『題名のない音楽界』司会等の映像、そして音楽と多彩に活動している。(C)Marino Matsushima
歌唱という天賦の才をたゆまぬ努力によって磨き上げ、表現者として大輪の花を咲かせつつある石丸幹二さん。ここでは『ラブ・ネバー・ダイ』ファントム役に挑む直前の18年のインタビュー、『モンテ・クリスト伯』直前の13年のインタビューを収録、日本を代表するミュージカル俳優のこれまでの歩みと“今の思い”をたっぷりとお届けします!
*目次*
石丸幹二インタビュー(2018年)
様々な役を通して“チャレンジ”を続けたい
――前回、お話をうかがったのが、復讐に燃える男を演じた『モンテ・クリスト伯』の時。以降『ライムライト』(15年 観劇レポートはこちら)では去り行く老優、『パレード』(17年・観劇レポートはこちら)、『スカーレット・ピンパーネル』(16年 観劇レポートはこちら)では正義の味方、そして『シークレット・ガーデン』(18年 観劇レポートはこちら)では深い悲しみにくれる人物と、本当に多彩な役柄をこなしてきました。
「『モンテ・クリスト伯』は2013~14年でしたね」
――この多彩さは意図されてのものでしょうか?
「常に“チャレンジしたい”という思いがあります。“石丸幹二”という俳優がいろいろなカッティングで見えるように、ということで、役と出会ってきましたね。次に演じる『ラブ・ネバー・ダイ』のファントムも、エッジのきいたキャラクターになっていくかなという予感があります」 ――『兵士の物語』(18)では“語り手”役。歌という武器の無いなかで、言葉とはこんなにも膨らませることができるものかと感じられる、豊饒な語りを披露されました。
「ありがとうございます(笑)」
――劇団四季時代から拝見してきた筆者の中では、失礼ながら石丸さんはいわゆる“器用なタイプの役者さん”ではないというイメージでしたが、今やどんな役柄もこなす器用さと、スターとしての華、茶目っ気を併せ持ち、亡くなった中村勘三郎さんを彷彿とさせます。
「そんな畏れ多い……。役者っていろんな顔を持っていてもいいと思いますし、年齢を重ねれば重ねるほど地平線が広がっていくと思います。勘三郎さんは本当に天才だと思います。私の場合は不器用は不器用なりにこつこつ励めば、一つの形にたどり着くと信じて、今も
多角的に経験を積もうとしているところなんです」 ――一つ一つに真剣に取り組むうち、いつの間にかこの境地にという感覚でしょうか、それともある時期に飛躍された実感があるでしょうか?
「劇団四季を離れたことは確実にきっかけになりましたね。それまでとは違った役柄をという気持ちから『ニュー・ブレイン』(18年TENTHでの観劇レポートはこちら)でのゲイのキャラクターや『キャバレー』(17年 観劇レポートはこちら)のMC役との出会いがありました。フィールドが広がると、ますます面白さを感じ、また違うキャラクターに挑んでいく、そんな俳優人生を送っていますね」
――音楽的にも、リリカルな曲調からパワフルなものまで、今や歌っていないものはないというほどの経験値でいらっしゃいます。
「でも、『ラブ・ネバー・ダイ』では初めてヘビーメタルを歌います(笑)。年齢的にできるものは限られますので、できるところで出来うるものに挑戦していって、できなくなったときにはまた次の出来うるものに挑んでいこうかなというプランはありますね」 ――以前、最終的なビジョンとして、ウィスパーソング(つぶやきのような歌)を到達点として挙げていらっしゃいました。
「申し上げましたね。ただ、ウィスパーというのは決して簡単なものではありません。つぶやきの中にいろんな心情や経験が積まれていないと、ただのノイズになってしまいます。それが歌えるようになったら凄いと思いますね。ですからウィスパーソングが目標地点だと思っています」
日本を、劇場文化が発展してゆく国に
――音楽番組での司会(『題名のない音楽界』)やTVドラマのお仕事にも積極的に取り組まれている石丸さんですが、それによってミュージカルを全国に向けてアピールしていらっしゃるという印象もあります。
「映像の仕事では、電波に乗って津々浦々に情報が届くのだなということを痛感しています。劇場空間は、実は限られた世界です。でもそこは素晴らしい世界でもある。そのことを少しでも多くの人に知ってもらいたい。だから、俳優たちが映像に出ていき、ミュージカルをやっているということを発信するのが大事なのではないかと思うんです。
いっぽうで、僕らはチケット代に見合うだけの演技をせねばならない。そうして役者も観客も一緒に成長していって、劇場文化が発展していく国になってほしいな、という思いがすごくあります」
――特に日本の場合、男性にもっと来ていただきたいですね。
「ミュージカルには、男性が面白いと思える要素がたくさんあると思います。男性もうんとうなずけるようなものをお届けしていきたいですね」
*『ラブ・ネバー・ダイ』についての石丸さんへのインタビューはこちら
*次頁で石丸さんへの13年のインタビューをお届けします!