「月」にちなんだジャズおすすめ3選!
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「月」にちなんだジャズおすすめ3選!
また、中秋の名月という言葉があるように、月を愛でながら夜長を楽しむ季節でもあります。古来より月には不思議な力があると言われてきました。特に西洋では、時には悪魔的な魔力を持つものとさえされています。
<目次>
テナーサックス奏者ボブ・ロックウェル 「ラブ・アイズ」より「オールド・デビル・ムーン」
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ラブ・アイズ
恋をしたのはあなたの瞳に宿った月の光のせいと歌われるこの曲。有名なスタンダードですが、同じテナーの演奏では、何と言ってもソニー・ロリンズのヴィレッジヴァンガードでのライブが上げられます。
ある意味絶頂期のロリンズの姿を捉えたライブ盤ですが、それだけに真摯に過ぎて、少し聴くのに勇気がいる盤でもあります。ここは一つ、同じハードな演奏でも、ほど良いボブ・ロックウェルによる演奏を聴きたいところです。
最後は意外とあっさりと終わってしまうのも、このCDの最後の曲と言う事を考えれば、むしろ都合良く、もう一度頭から聴きなおしてみたい気分にさせられます。
数年に一度の拝聴でいい天才の演奏より、何度でも聴き直しをしたい、親しみのもてる好盤です。
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ヴォーカル、アストラッド・ジルベルト「いそしぎ」より「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」
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いそしぎ
ボサノヴァの女王、アストラッド・ジルベルト。そのソロボーカルとしての第二弾が今回ご紹介するアルバム「いそしぎ」です。ここでの「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」におけるアストラッドの歌い方はいたってシンプル。鼻歌のようなと形容されるほど、力の抜けた少女のような歌い方です。
その一種超然とした歌唱が、アストラッドの持ち味。そこには、秘密がありました。
ボサノヴァを代表する歌手にまでなったアストラッドは、まさにアメリカンドリームを具現化した女性です。彼女の最初の転機は、ボサノヴァの創始者の一人、ジョアン・ジルベルトとの出会いで訪れました。
ボサノヴァ誕生の同時期にあたる1959年に結婚した二人は、その四年後ブラジルからアメリカに渡ります。ここで二度目にして最大の転機が彼女に訪れます。
なんと、それまで本国ブラジルでは、歌手ではなく普通の主婦だったアストラッドの歌がプロデューサーのクリード・テイラーに気にいられてしまいます。そしてヴォーカルとして、レコードデビューしてしまったのです。そのレコードがアメリカボサノヴァ界の第一人者テナーサックス奏者のスタン・ゲッツ「ゲッツ・ジルベルト」でした。
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ゲッツ/ジルベルト
その曲こそが有名な「イパネマの娘」です。突如シンデレラのごとくデビューしてしまった彼女。自身の歌の部分をカットされた旦那さんのジョアンと、それから少しして別れてしまったのは、これも運命のいたずらなのでしょうか。
素人の魅力で勝負した稀有のヴォーカリストが、アストラッド・ジルベルトなのです。そう思って先ほどの「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」を聴くと、まるで恋人が耳元でささやいてくれているように聴こえてくるでしょう。
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ヴォーカル、ビリー・ホリデイ「レディ・デイ・ザ・ベスト・オブ・ビリー・ホリデイ」より「ホワット・ア・リトル・ムーンライト・キャン・ドゥー」
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レディ・デイ:ザ・ベスト・オブ・ビリー・ホリデイ
各人、乗りに乗った素晴らしい演奏です。ビリーの声もはずんでおり、晩年にみられるようなアクの強い語尾にアクセントを置く癖がみられずに、瑞々しく楽しげで軽やかです。
この時ビリーは若干二十歳。この演奏からは、すでにボーカルとして、確固たる歌唱力を身につけていた事がわかります。ある意味早熟な天才だった彼女は、この時期にしてすでに最高に輝いていたと言えます。
やがて来る彼女の秋のシーズンなど、この時の彼女自身もまったく感じていないであろう、はつらつとしたビリーを一躍有名にした快唱と言えます。
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月にちなんで、もう一曲
吉田日出子「上海バンスキング」より「月光価千金」
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上海バンスキング/吉田日出子名選集
この時聴いた吉田日出子の歌の素晴らしさは、なんと表現したら良いのでしょう。彼女の特徴的な声質の不思議な魅力にあふれた、説得力のある歌は、いまだに耳から離れません。
特にこの月光価千金では、出だしのハミングが素晴らしく、アップテンポになってからは、彼女独特の日本語の発音やアーティキュレーション(一音一音区切る歌い方)がチャーミングです。
この秋の夜長に、素敵なジャズを聴きながら、月の光に酔い痺れてはいかがですか。また、次回お会いしましょう!
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