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ダンサーズ・ヒストリー 演出振付家 小野寺修二

演出振付家として、またダンサーとして、幅広いシーンで注目を浴びる小野寺修二さん。最新作『鑑賞者』にかける想いは、先日お伝えした通り。ここでは改めてそのダンス人生を振り返り、情熱の源を探ります。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

バレエガイド


“本当にやりたいこと”を探して

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リハーサル中のひとコマ。
ph 鹿島聖子

コンテンポラリー・ダンスから演劇作品に至るまで、年間10本近い作品に関わる気鋭の演出振付家・小野寺修二さん。小野寺作品の醍醐味といえば、マイムをベースにした独創のステージと、舞台を満たす唯一無二の味わい。その原点を辿ると、大学時代に遡る。

「学生の頃、演劇をちょっと齧って……。といっても、ホントに遊び程度。友達と一緒に“何かやろう!”なんて始めてはみたものの、あれを芝居と言っていいのかどうか(笑)。ただ、照明のバイトをしてみたりと、少なからず舞台に興味は持っていた。多分演劇が好きというよりも、人前で何かをやりたいっていう気持ちがあったんだと思います」

演劇に寄せる熱は、学生時代の良き思い出として終息。大学卒業と同時に某セメント会社の商社部門に就職し、サラリーマン生活をスタートさせる。だがそれは、「三年で辞めようと決めてた」という期限付きのものだった。

サラリーマン生活満三年、3月31日をもってきっかり退社。どうやら、営業マンに向いていたようだ。会社からは、重要な戦力として引き止められる。苦し紛れにした言い訳が、「司法試験を受けるため(笑)」。

本音を言うと、コレといった予定はなし。取りあえず、辞めことだけ決めて辞めた。若さ故の行動か、実に思い切りのいい話である。

「ちょうどバブルの終わり頃で、時代もちょっと浮かれてた。だから、“やりたいことをやろう!”っていう気持ちがあって……」

果たして、自分の“本当にやりたいこと”とは? 模索の中で浮かんできたのが、大学時代に齧った演劇の魅力。あの日々に、再び戻れるかもしれない……。

思い立ったら行動は早い。早速情報誌を片手に、劇団探しに奔走する。しかし、タイミング悪く当年度の募集はどこも締め切り。「唯一締め切りがなかった」という、ボイストレーニング学校へ入学する。この偶然の流れが、マイムへの道を切り開いてゆくことになる。

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リハーサル中のひとコマ。
ph 鹿島聖子

あるとき授業の一環として出された、マイムのエチュード。課題が思うように消化できず、四苦八苦していたときのこと。

「ふと大学時代の光景を思い出したんです。通学路にタイツを履いてるひとたちが出入りしてる怪しい場所があって、『日本マイム研究所』という看板が出てた。当時は何かヘンな宗教団体なのかなって思ってたけど、あれはマイムの学校だったんだと(笑)。これは縁があるのかなと思って」

『日本マイム研究所』といえば日本有数のマイムスタジオであり、中村有志をはじめとしたマイムのスターを輩出している名門だ。

何気なしに門を叩いてみたものの、生徒は皆ひとクセある変わり者ばかり。スタジオにはどこか不穏な空気が漂っている。

「この人たちとは絶対ムリ、合わないと思って(笑)。“壁”ができるようになったら、さっさと辞めようと考えてました(笑)」

他の生徒とは距離を置き、ほんの一時のつもりで通っていた。そんな彼を、師匠は何故か目をかけ、早い時期から公演に出演させる。戸惑いつつも立つことになった、マイムのステージ。だが回を重ねる内に、いつしかその世界の虜になってゆく。

「舞台で先生の作品をやると、僕が絶対面白くないだろうなってことをお客さんが笑うんです。何が面白いんだろうって、自分では全然理解できなくて。だけど一生懸命やってる内に、少しずつ意味がわかってきたというか……」

研究所に在籍したのは二年間。そこでは、後の人生を左右する大きな出逢いがあった。

「最後の公演で高橋さんと作品を作ったら、すごく楽しくて。これきりというのはもったいないから、何か一緒にやろうよということになったんです。そこに、同期の藤田さんが加わって……」

高橋淳、藤田桃子、小野寺修二による、マイムカンパニー『水と油』(後に須賀令奈も加入)の誕生である。

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リハーサル中のひとコマ。
ph 鹿島聖子



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