今年6月、あるゲイの男の子が電車に飛び込んで亡くなりました。彼が直前までTwitterに書き込みをしていたため、「飛び込んだのはこの人」と話題になったのです。その過去のつぶやきから、大学生活やバイトや恋愛がうまくいってなかったこと、親に言ったけど受け容れてもらえなかったことなどが伝わってきました(すでにアカウントは無くなっています)
ネット上ではいろんな反応がありましたが、ゴトウはなんだかひどく落ち込み、何も言う気が起こりませんでした(過去に自殺した友人のことを思い出したり、もし彼が知り合いだったら救うことができただろうか……と自問したり、悶々としていたのです)
年齢や性別、セクシュアリティにかかわらず、日常生活のなかで、誰もがつらい、しんどい思いを抱えています。本気で恋した相手からボロ雑巾のように捨てられたとか、学校でいじめられていながら誰にも相談できないとか、上司の命令と部下からの突き上げの間で板挟みになったとか、重い病気を患ったとか、介護に疲れたとか……。
生きているかぎり悩みは尽きないものでしょうが、それにしても、日本が先進国一の自殺率であり、20代~30代の死因の1位が自殺であるというのは、とても悲しいことです。本当につらくて苦しいとき、親身に話を聞いて手を差し伸べてくれるような人が周りにいなくて、あまりにも簡単に孤立無援の状態に陥ってしまう、そういう人が本当に多いってことですよね。
死にたくなるくらい気分が落ち込んだとしたら、どうしますか? 恋人や友達と話して楽になる方もいるでしょう。ゲイバーやクラブで憂さを晴らす方もいるでしょう。が、もっと根源的に自分を癒し、ケアするために、ちょっと人には言えないような類のことをしている方もいらっしゃると思います。
映画監督の橋口亮輔さんの最新作『ゼンタイ』は、まさにそうしたことを描いていると思います。
全身タイツ(ゼンタイ)という絵面のインパクトが先行しがちですが、ぜひ先入観なしに観ていただいて(ゲイ的には全然アリというか、素直に楽しめると思います)、ゼンタイによって癒される人たちの姿とか、ゼンタイが象徴するものについて思いをめぐらせてみてもいいと思います。
今の時代、大して演技力もない若くてキレイな子たちを写しただけのウソくさい映画なんかよりも、『ゼンタイ』の方がはるかに意味があります。なかなか未来に希望をもてず、幸せを実感しにくいこの国で、どうやって生きていったらいいのか?というものすごく大事なことを描いていると、ゴトウは思います。