チューベローズの花と香りの印象
チューベローズの花
原産地はメキシコ合衆国で、8月の夜にはエキゾチックな甘く複雑な香りを強く放つことで知られています。その香りは、八重よりも一重の原種に近いほど強く香り、フレグランス原料としての栽培は一重のものですが、強さの違いこそあれ、香りの個性はほぼ同じです。
調香の素材としては、ホワイトフローラルの個性の中でも、ふくよかな女性のイメージがあります。また、エキゾチックな印象が強いためか、おおらかでセダクティブで、男性を魅了する美魔女のイメージもあります。
オリジンが隣国のメキシコということが一因かもしれませんが、北米の女性にはとても好まれるフローラルの個性です。彼女たちにとっては、「SEX and the CITY」で見たような、素敵なメキシコ旅行とチューベローズのフレグランスが結びついているのかもしれませんね。
NYやサンフランシスコのホテルのエレベーターなどで、一緒になったキャリーやシャーロット似の女性が身にまとったフローラルスィートの香り。「このフレグランスはなに?」と感じるはずのミステリアスなチューベローズ系フレグランスをご紹介しましょう。
伝統あるフレグランスメゾン: ウビガン 「オランジェアンフルール」
ウビガンは ジャン・フランソワ・ウビガンが1775年にパリのサントノレ通りにオープンしたフレグランスショップで、マリー・アントワネット、ポンパドゥール夫人やナポレオンなどが愛用したことでも著名な老舗メゾンです。近年発売された「オランジェアンフルール」というフレグランスは、その名のとおり、オレンジの花をトップノートに使いつつも、トルコのバラ、エジプトのジャスミン、そしてエキゾチックなチューベローズの花香がミドルノートとして個性を創っています。イランイランやナツメグのタッチも、伝統あるメゾンならではの天然感たっぷりですが、重たくならずに使いやすそうな印象です。
香りのアート:セルジュ・ルスタン「テュベルーズクリミネル」
レ サロン セルジュ ルタンス
本店のみでしか取り扱わない香りも多々あり、その中の一つに、日本語で【 罪つくりな月下香 】というミステリアスで素敵な名前の香りがあります。クリエーターであるセルジュ ルタンス氏が「“カトリーヌ・ド・メディシスの香り」と語る「テュベルーズクリミネル」です。
夜に香りたつ気高い月下香の香りを中心に、ヒヤシンスのみずみずしいフローラルグリーンがトップノートを飾り、ラストノートにかけてはナツメグのスパイシーとのハーモニーが、エレガントでもあり、なまめかしい高貴な女性を印象づけます。パリへお出かけの際は、彼のアーティスティックなショップにぜひ立ち寄ってみてください。
一番美しく使える季節は……
夏の花であるチューベローズの香りですが、湿度が高い日本の夏の季節は、香りの持つ、包み込まれるような芳醇感が強調されすぎるようです。日本では湿度が下がってきて、カジュアルに飽きてきたころ。本格的なオシャレ本番の初秋からが似合いますので、ぜひ世界の女性たちに愛されているチューベローズ系のフレグランスの魅力を試してみてくだい。