競馬新聞の数字の意味とは?
競馬新聞の数字の意味とは?
競馬新聞の構成には基本パターンがあります。レースに出走する馬の名前がズラリと並び、その下に、◎や△など記者たちの印が、さらにその下に、各馬のここ何走におけるレース成績が載っています。この連なりを「馬柱(うまばしら)」と呼びます。
馬柱の中で特に見方を知る必要があるのは、レース成績。ひと口に成績といっても、そこにはレースの着順以外の様々な情報が細かく書き込まれており、それを見ると、レースの大まかな様子が分かる仕組みになっています。
ということで、まずは以下のページをご覧ください。ページ右側に、レース成績の見方が載っています。
馬柱の見方|JRA
これはJRAのウェブサイトにおける馬柱の見方の説明ですが、多くの競馬新聞も同じような形式で成績やその馬の情報を表示しています。これを見れば、どこに何が書いているのか、おおよそのイメージが付くはず。
しかし大切なのは、その数字にどんな意味があるのか。それを知ることで、新聞を見ながら、自分で過去のレースや馬の個性を想像し、レースの予想につなげていけるようになります。
「着順」と「着差」から分かること
成績を見る際にもっとも重要なのは、もちろん着順。前走・前々走で何着に入っているかを見れば、その馬の大まかな実力や調子が掴めてきます。ただ、それと同時に必ず見てほしいものがあります。それが着差です。先ほどのリンクにもありましたが、各馬のレース成績欄の一番下には、そのレースの勝ち馬(当該馬が1着の場合は2着馬)と、1着からの着差(タイム差)が書かれています。仮に、ある馬が4着のレースで、勝ち馬名の隣りに「0.4」とあれば、「勝ち馬から0.4秒差の4着」という意味になります。
ここでポイントになるのが、競馬における着差の考え方。たとえば、2013年5月に行われた日本ダービー(芝2400m、東京競馬場)において、勝ったキズナと2着エピファネイアの差は0.1秒。たったコンマ一秒の差ですが、馬体で表すと「半馬身差(※ゴールした際の差が体半分)」となり、競馬においては決して紙一重の差ではありません。 さらに、1着キズナとの差が0.5秒に広がると、着順は9着にまで下がります。つまり、競馬における0.5秒は決定的な差と見なければなりません。といっても、0.5秒の差を次のレースであっさり逆転することもあるから、私たちは悩むんですけどね(まして0.1秒差ならなおさらです)。
見方を変えれば、もし前走が6着でも、1着との差が0.1~0.2秒ほどだったら、着順ほどは差がない、すなわち「条件やレース展開によっては、1着との逆転もあり得る」とも考えられるのです。
競馬新聞から、前走の戦いぶりを想像してみる
その馬の近走成績を見るうえで、ぜひ注目してもらいたいのが、各レースでの「通過順位」。これは、あるレースにおいて、その馬がどんなポジションでレースを運んだかを示すもので、この通過順位と着順を照らし合わせれば、大まかではありますが、その馬が前半から飛ばして逃げ切ったのか、それとも最初は後方で温存して、最後に追い込んだのか、などのレースぶりが見えてきます。先ほどのリンクでは、通過順位が「7-4」と出ていましたが、これは「3コーナーの順位→4コーナーの順位」を表しています。日本の競馬は基本的に、最後のコーナーが「4コーナー」となるので、この馬は3コーナーから徐々にポジションを上げ、2着でゴールしたことになります。
また、通過順位を見る際は、必ずそのレースの全体頭数を成績欄で見ておきましょう。この例の場合は14頭のレースなので、7番手となると、全体の真ん中辺りにいたと想像することができます。
なお、通過順位が「6-4-4」など三つある場合は、2コーナー~4コーナーの順位を示している事になります。
「上がり3ハロン」が意味するのは?
さらに、レース成績を見るうえで重要になるのが「上がり3ハロン」。どんな競馬新聞にも、必ずレース成績の中には、「34.1」や「36.4」といった数字が載っています。これが噂の「上がり3ハロン」であり、競馬を見る上で重要視される数字です。ではどういったものなのか。まず、「ハロン」とは距離の単位で、1ハロン(F)=200m。そして「上がり3ハロン」とは、そのレースにおける各馬のラスト600mの走破タイムを意味するのです。
サラブレッドが芝コースにおいて、1ハロンを走るペースの目安は12秒。12秒を切れば「早い」とされます。ただし、勝負どころとなる最後の600mは、全力を振り絞るゾーンですから、多くは36秒を切って、35~34秒台、場合によっては33秒台や32秒台を記録する馬もいます。砂主体のダートコースについてはタイムがかかるため、上がり3ハロンは36~38秒台が多くなります。
これを先ほどの通過順位と照らし合わせると、その馬がどんなポジションをとり、最後にどんな伸びを見せたかが分かるのです。
さらに、上がり3ハロンが遅いレース(芝コースなら35秒後半~36秒台)で好成績を残している馬は、裏を返せば、レース前半のペースが早く、最後は持久戦になる展開が得意であり、逆に、上がり3ハロンが早い時(芝コースなら32~33秒台)に上位に来る馬は、前半スローペースで最後に加速するレースが得意と考えることもできます。
さらにさらに、出走馬の今までのレースでの通過順位から、今回のレースがハイペースの持久戦(※前目の位置につける馬が多いとなりやすい)になるのか、スローペースの瞬発力勝負(※後方につける馬が多いとなりやすい)になるのか、などを考え、それに向く馬を探すのが、予想の基本パターンなのです。
名馬のラストランを新聞で見るとこうなる
2006年のG1有馬記念(芝2500m、中山競馬場)にて、その競走生活に幕を下ろしたディープインパクト。 競馬史に名を残すスーパーホースのラストパフォーマンスを、新聞風に表記してみました。------------------------------
06.12.24 中山
有馬記念 G1
1 14頭4番1人
438kg 武豊 57.0
2500芝 良 2.31.9
12-11-10 33.8
ポップロック(0.5)
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日付 競馬場
レース名 格付け
着順 頭数 馬番号 人気
馬体重 騎手 負担重量
距離 コース 馬場状態 走破タイム
通過順位 上がり3ハロン
2着馬(着差)
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ディープインパクトのすごいのは、上がり3ハロンの速さがズバ抜けていたこと。この有馬記念でも、33.8秒という、出走馬の中で最速の上がり3ハロンを叩き出しました。さらに驚くべきは、2番目に早かった馬のそれが34.4秒と、その差が0.6秒もあったという事実。競馬における0.6秒は、およそ4馬身の決定的な差ですから、ディープインパクトのラストスパートは、次元が違ったといっていいでしょう。
ということで、この記事の締めくくりに、先ほど新聞風に記載したディープインパクトの引退戦を映像で見て頂きましょう! データと映像を照らし合わせてみるのも、競馬の楽しみ方の一つです。
2006年有馬記念のレース映像(ディープインパクトは赤帽の4番)
レースを見たことがなくても、新聞の見方さえ覚えておけば、その馬について大まかなイメージを浮かべることは可能。あとはそれをどう予想に活かすか。これはまた別の機会に説明したいと思います。
(リンク)
第51回有馬記念|netkeiba.com
第80回東京優駿(日本ダービー)-2013年
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